FC2ブログ

趣味の迷宮 ~LABYRINTHVS AD PARNASSVM~

作者Tiberius Felixの迷宮的な趣味に関する雑記帳。 主に音楽、映画、読書、語学、グルメなどの感想・論評を中心に、興味の赴くまま無秩序に迷宮的に書き綴っていくつもりです。

小オデュッセイア、或いは近所の散歩

 久しぶりにすっきりと晴れた、青空の美しい一日だった。
 それゆえ私の自習室に行って勉強しようという気もまるで今日の空の雲のようにすっきりと消え去り(苦笑)、今日は思い切って一日休むことにした。

 まずはせっかくの秋の青空をたっぷりと味わうべく、久しぶりに長い散歩に出かけた。

 反町駅近くの私の家を出、どこという当てもなくなんとなく歩いていて、鶴屋町の歩道橋の上に差し掛かったとき、ふと、そういえばこの道を右折するルートは、ここから300メートルくらいのところにある友人宅より先に進んでいったことがまだなかったなあ、と思い、とりあえずその方向に、ひたすらまっすぐ歩き続けてみることにした。

 まっすぐ、というのは、私は極度の方向音痴なので、知らない道で一度曲がったら最後もう二度と元来た道に戻れなくなる虞があるからである(苦笑)。

 さて、車にひかれない程度の最低限の注意力を残してあとはひたすら美しい青空と快適な空気の心地よさを味わうことだけに神経を使い―要するに何も考えずボケーッと、ということなのだがーただただまっすぐ歩いていくこと数十分、交差点の青標識に「保土ヶ谷駅西口」と書いてあるのが目に入る。保土ヶ谷といえば横浜から横須賀線の一駅先、横須賀線といえば品川から横浜までわずか3駅しかない駅間隔の大変広い路線である。そんなところまで来てしまったのか、と恐れをなし、そのまま引き返そうかと思いきや、そこを左に曲がった先にランドマークタワーが見える。そこで私は、ああ、この道をまっすぐ行くとみなとみらいに出るのか、みなとみらいあたりは建物が少なく空が広いし、今日みたいな日に散歩するにはいい場所だ、などと考え、とりあえず左に曲がってみることにした。方向音痴の浅知恵である。
 しかし歩き出しては見たものの、その道はまっすぐランドマークタワーにつながっているわけではないので、くねくねと紆余曲折が続くのである。もはやこうなってしまってはあきらめてとにかくひたすら道なりにまっすぐ行くしかない。まあ最悪、どうしようもなく道に迷ったらタクシーを拾って最寄り駅まで連れてってもらって電車で帰ろう、などと考えながら歩き続けること約一時間、ようやく見覚えのあるエリアに出たと思ったらそこは桜木町よりは横浜に近いあたりの旧東横線ガードの前の広い通りだった。何のことはない、私はまっすぐ直線的に進んでいるつもりだったのに大きなC文字を描いて進んでいたようである。方向音痴の面目躍如だ(笑)。

 とりあえず約二時間近く歩き通して疲れを感じたので桜木町駅前のコーヒー店で休憩することにした。屋外のテラス席に座り、とりあえずiPodを取り出す。選んだ曲は細野晴臣、「北京ダック」である。横浜中華街を散歩していたら火事が起こった、あわてて逃げているあのアヒルはきっと北京ダック、というシュールな歌詞のお気楽な歌で、横浜の町をぶらつきながら聴くのには最適である。特に今日の私のようなシュールな散歩コースならなおさらだ。

 その後桜木町から反町までまた徒歩で帰ったので、トータルでは3時間くらいは歩いただろうか。せっかくそれだけカロリーを消費したのだから、今夜はたとえばオリーヴオイル抜きでインサラータ・カプレーゼ(モッツァレラトマト)だけ、とかのメニューにすれば相当体脂肪の駆除が進むだろうとは思ったものの、やはり空腹を抱えて食料品売り場を訪れてしまったのが運の尽き、安売りコーナーに平積みされているレトルトホイコーローソースが目に入るや私の手足は勝手に豚肉とキャベツとビールをかごに入れていた。まあまとまった量の野菜や肉を強火でガンガン炒めるというのは料理において行われる作業プロセスの中でもかなり大きな快感をもたらしてくれる作業だし―それは小麦粉の生地をこねる事の次くらいに快感だろう―やはり疲れた体にはこってりした肉料理が一番だ。

 というわけで帰宅後はキャベツを炒めて余分な水分とともに一週間分のストレスを飛ばし、ホイコーローを作ってやった次第である。

 まあ要するに近所をうろうろ散歩して晩飯を作っただけ、というだけのことなのだが、白髪三千丈式の大袈裟な妄想を愛する私は一人前半の散歩をオデュッセウスの放浪と、後半の帰宅後のキャベツ炒めによるストレス誅殺を、オデュッセウス帰宅後の敵キャラ誅殺と重ね合わせて悦に入っているのである。

 というわけで今夜は、モンテヴェルディのオペラ「ウリッセ(=オデュッセウス)の帰還」のDVDでも見ようかと思う。
スポンサーサイト