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趣味の迷宮 ~LABYRINTHVS AD PARNASSVM~

作者Tiberius Felixの迷宮的な趣味に関する雑記帳。 主に音楽、映画、読書、語学、グルメなどの感想・論評を中心に、興味の赴くまま無秩序に迷宮的に書き綴っていくつもりです。

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ヴェニスの商人

 映画「ヴェニスの商人」を見た。

 シェイクスピアである。英文学の最高峰である。

 この映画の売りは16世紀のヴェネツィアを忠実に映像化、と言うことだそうで、実際その映像は大変美しくリアリティに満ちたものであったのだが、実はそれ以上に見るべき―否、聴くべき物を持っている。それはシェイクスピアが練り上げた言葉のリズムの妙をくっきりと伝える、俳優たちの台詞回しに他ならない。

 シェイクスピアの英語は難しい。
 学生のとき、映画の「タイタス」を見ていたく感動した私は無謀にもタイタス・アンドロニカスの原書を買ってはみたものの、結局読みきれずに今本棚の奥深くに眠っている。
 
 この難しさは単語のつづりが違う、語形変化が違う、受験英語では出てこないような単語が続出する、などといった原因があるのだが、さらに問題をややこしくしているのは、台詞が基本的に定型詩の形式によって書かれていることである。

 定型詩の形式で台詞を書くためには、まずアクセントの強弱を一定の規則に当てはめて文を作る必要がある。強弱弱、とか、強弱強弱、とか形式上定められた一定の韻律を保って単語を配置しなければならない。そのために語順はまるでラテン語かギリシア語のように変幻自在、複雑怪奇、まるで源氏物語の日本語のような英語の出来上がりである。正直、各変化も性別変化もない分どの単語がどの単語にかかっているのか何のヒントもなく、ギリシア語よりも難しい局面もあったりする。

 しかしながらシェイクスピアの格調高さはこの韻律からくるものが大きいそうで、韻律がわからないとシェイクスピアの本当の良さは味わいきれないものらしい。ところが私のように、もっぱらペーパーテストで点数を稼ぐことを目的に英語を覚えてきた日本人にとってはアクセントと言うやつは一番苦手な部類である。単語の意味は分かってもアクセントがどこにあるかは出てこない。だからと言ってすべての単語のアクセントをいちいち辞書で引きながら読んだのではせっかくのリズムが台無しである。日本生まれ日本育ちの日本語ネイティヴで、シェイクスピアのアクセントのリズムを感じ取りながら読める人が果たして何人いるだろう。

 ところが字幕付の映画ならば、この問題は一挙解決なのである。ネイティヴの俳優たちが、朗々と読み上げてくれるので、字面で見てもさっぱり見えてこない韻律がくっきりと浮かび上がってくる。

 たとえば離島に暮らす姫君がヴェネツィアからはるばるやってきた求婚者に一目ぼれしてつぶやく台詞は強弱強弱強弱・・・・・・と言うリズムで書かれており、これがちょうど胸をどきどきさせた感じを何ともリアルに描いているのである。万事この調子でリズムが表現と一体化されており、なるほどこれはすごい、と心底納得させられる。

 この映画は、韻律をっくっきりと強調して台詞を語っているため、私のようにアクセントなどさっぱりわからなくてもこうしたシェイクスピアの真髄をたっぷりと味わえるのである。

 やはり台詞は、音に語られてナンボ、なのである。
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