趣味の迷宮 ~LABYRINTHVS AD PARNASSVM~

作者Tiberius Felixの迷宮的な趣味に関する雑記帳。 主に音楽、映画、読書、語学、グルメなどの感想・論評を中心に、興味の赴くまま無秩序に迷宮的に書き綴っていくつもりです。

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はるばる浜松へ

 コンサートを聴きに、横浜から新幹線ではるばる浜松まで行ってきた。
 浜松はこだましか止まらないため、距離としては昨年6月の三重は桑名への遠征の半分程度と思われるのだが、所要時間は8割近くかかっている。

 で、そうまでして何を聴いてきたかというと、ショパンである。それもただのコンサートではない。浜松楽器博物館所蔵の、プレイエルの1830年(いつも思うのだが、こうやって古楽器の製作者と年代を書くのってワインみたいだと思う。楽器もワイン同様、作り手と年代で音色が変わるのは同じだからだろう。)のオリジナルを使用したそれはそれは貴重なコンサートである。

 ショパンは、気分が乗っているときの演奏は、プレイエルでなければならない、プレイエルからは、自分の望むあらゆる音色を引き出せる、と言う旨の発言を残しており、このピアノをことのほか愛用していたと言う。1830年といえばちょうどショパンがデヴューし、パリで華々しく活動を始めていた時期で、まさにショパンを弾くにはこれ異常ない楽器と言えるだろう。

 このピアノは箱構造の木製フレームに平行弦を張り、突き上げ式のシングルエスケープメントアクションを備えた6オクターヴ半の楽器で、木製フレームに平行弦ならではのほの温かくにごりのない音色が大変美しい。特に高音域のほのかな輝きがなんとも言えず美しい。

 ショパンといえば、高音域の繊細な装飾音が特徴的だが、プレイエルで演奏すると、ショパンがなぜそういう音楽を書きたくなったのか、非常によく分かる。これをプレイエルでやると、出てくる音がとにかく美しく、新月の夜の星空のように繊細な輝きを放つのだ(これがモダンピアノだと星空と言うよりイカ釣り漁船のアセチレンランプのように強烈に光りすぎてしまうことが多いような気がする。)。今日初めてプレイエルでの実演に接して、ショパンはプレイエルを弾きながら、少なくとも無意識的にプレイエルから最高の響きを引き出すように作曲していったに違いない、と実感した。

 演奏はおなじみ小倉貴久子さん。まるで今日の乗ったショパンもかくや、とばかりに、美しく繊細なピアニシモから雷鳴のごときフォルテッシモまで、プレイエルからあらゆる音色を引き出し、戦前の巨匠もかくや、とばかりに、ダイナミックなアゴーギグで聴かせてくれる。特にバラード第一番の演奏は今日の白眉であった。

 会場でのアナウンスによると、演奏会のあとで録音を行うそうである。CD発売はいつになるか、今から楽しみだ。シリーズ化構想もあるそうで、このプレイエルでの全曲演奏・全曲録音が実現したらどんなに素晴らしいだろうか。このために使ってくれるのならば、喜んで税金払いますぜ(苦笑)。

 実はこの公演は、3月中に東京でもう一度行われる。残念ながら私は仙台方面への出張とバッティングして行けないのだが(それゆえはるばる浜松まで遠征したのだ)、興味のある方には是非行くことをお勧めしたい。

 詳細はhttp://www.h2.dion.ne.jp/~kikukohp/で。
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