趣味の迷宮 ~LABYRINTHVS AD PARNASSVM~

作者Tiberius Felixの迷宮的な趣味に関する雑記帳。 主に音楽、映画、読書、語学、グルメなどの感想・論評を中心に、興味の赴くまま無秩序に迷宮的に書き綴っていくつもりです。

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カラブリア料理

 イタリア半島のつま先の部分、カラブリア州は、イタリア国内における南北の文化的対立の影響もあってか、南イタリアにある種の恐怖心を植え付けられている日本人にとってはなじみの薄い地域である。

 そんなカラブリア州出身のシェフが半蔵門駅のすぐ近くに店を構えていて、そこでは前もって予約をすればカラブリアの地元料理を味わわせてくれるそうである。

 というわけで、カラブリアの地元料理を味わおうというイヴェントがあったので、私も喜び勇んで参加してきた。

 カラブリア地方の名産は、トウガラシとフェンネル、甘草などのハーブ類で、当地の郷土料理はこうした食材をふんだんに使用した、イタリアンとしてはやや異色な独特の食文化を形成しているそうである。そしてカラブリア州のもう一つの名産はワインで、ギリシア植民都市時代には「ワインの地」、エノトリアと呼ばれてカラブリアのワインがギリシア本土に輸出され、大変このまれたそうで、オリンピアの競技会で勝者にふるまわれたワインは、ここカラブリアのチロという町のワインだったのだとか。

 まずはそのチロの赤ワインで乾杯する。非常に軽やかで華やかな味わいで、確かにうまい。これは土着品種のガリオッポで作られているのだが、このブドウ品種で作られたワインは地元産のトウガラシとの相性が良く、韓国料理にさえマリアージュしてしまうワインとして漫画「神の雫」で話題になった品種でもある。

 アミューズに野菜のマリネのプルスケッタが出てくる。唐辛子の利いたオリーヴオイルでマリネされた緑の野菜が、しっとりした食感としっかりした塩味、オリーヴの風味が加わり、トウガラシの辛みが全体を引き締めている。ワインを一口飲むと、その辛さとこのワインの華やかさが非常に相性が良く、なるほどさすがは地元のワインだ、と納得する。

 続いて、アンティパスト・ミスト。カラブリアのマンマの味という、茄子とひき肉とトウガラシで作った小さなハンバーグ、自家製のフレッシュなリコッタチーズと甘みの強いフルーツトマトのカプレーゼ風、ヒラメのカルパッチョ、カポナータ、タコのマリネの盛り合わせである。印象的だったのは茄子とイワシとトウガラシのハンバーグで、茄子の滑らかな食感とひき肉のうまみが溶け合い、大変美味であった。カポナータにも隠し味的にトウガラシが使われていて、後味にほんのりとアラビアータ風の辛みが残るのがまた面白い。こうした辛味に合わせて、甘みの強いフルーツトマトに甘みの強いりこったを合わせたカプレーゼ風トマトの甘みが用意されているのが、大変心地よいバランスであった。

 かごに盛られたパンは、ふわふわとした生地の柔らかいものと、グリッシーニを小さなリング状にしたようなビスケット状のものの二種類であった。どちらにもフェンネルをたっぷりと練りこんでいて、辛いアンティパスとの後に一口食べるとフェンネルの浮遊感のある香りが辛さをスッと引かせ、大変心地よい風味である。

 プリモ・ピアットでは、手打ちのショートパスタにトウガラシとリコッタチーズ、トマトソースをからめたものと、サバのトマトソースのスパゲッティの2種盛り合わせ。リコッタチーズのまろやかな味わいと、トウガラシの辛みとのバランスが良く、またサバのうまみとトマトのうまみの溶け合ったスパゲッティも申し分ない。

 セコンド・ピアットには、カラブリア風サルシッチャ(豚肉ソーセージ)と菜の花のグリル。菜の花はカラブリア地方でも春先によく食べる食材なのだそうで、当地ではグリルして塩を振って食べるのが多いのだそうである。カラブリア風のサルシッチャは、名物トウガラシとフェンネルをたっぷりと練りこみ、それ以外にも何種かのハーブを使っていて、大変特徴的な味わいであった。豚肉の脂気をトウガラシの辛みが引き締め、ハーブの香りが味に立体感を加える。塩味だけに頼らず、こうしたハーブの風味が豊かなハーモニーをもって肉の味わいを深めてくれているのである。

 ドルチェは、「乳の花(フィオル・ディ・ラッテ)」と名付けられた、はちみつで甘みをつけたミルクのアイスクリーム、名産の甘草のムース、そしてレモンの皮を練りこんだ香り高いタルトの盛り合わせ。蜂蜜の風味の濃い甘さ、香りが、新鮮なミルクで少しシャーベット状に作られたアイスクリームのシャリシャリとした舌触りと相まって大変心地よい。甘草の、少々漢方薬を彷彿とさせる香りも、ムースの中で決してとがらぬよううまく作られている。そして、レモンの香りの大変清冽なタルトは、春の訪れを感じさせるような大変華やかな味わいであった。

 カラブリアの料理は、今まで食べたイタリアのどの地方の料理よりも個性的で特徴的で、非常に面白い料理であった。次にイタリアに行くときはぜひともカラブリアを行程に含めて、本場のカラブリア料理を味わいたいと思う。
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