趣味の迷宮 ~LABYRINTHVS AD PARNASSVM~

作者Tiberius Felixの迷宮的な趣味に関する雑記帳。 主に音楽、映画、読書、語学、グルメなどの感想・論評を中心に、興味の赴くまま無秩序に迷宮的に書き綴っていくつもりです。

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続・ナポリ満喫~迷宮的旅行記第8章(15)

 博物館を背にしてナポリの街を東西に分断しながらまっすぐ南北に貫く大通りをひたすら歩いて行くと、やがてサンタ・ルチアの港へ出る。

 お目当てはサンタ・ルチアの港から一本入った路地にある、地元民に人気のあるというトラットリアである。

 ……が、地球の歩き方を頼りにたどりついてみると、シャッターが下りており、なんとその日は運悪く休業日であった。

 まぁ、昼も早いし、サンタ・ルチアを散歩したと思えばよかろう、と、来た道を引き返し、今度はそこから10分ほど歩いて別のリストランテに行く。

 こちらはしっかり営業中。
 やはり地元民でにぎわっていて、続々とやってくるなじみ客がカメリエーレと親しげにあいさつを交わしている。

 ナポリへ来たら何はなくとも、モッツァレッラブッファラである。アンティパストには、迷わず頼む。

 モッツァレッラブッファラは大変に足の速いチーズで、ナポリからミラノへ運ぶ間にも味が落ちるといわれている。したがって、モッツァレッラブッファラの100%の実力を味わうには、朝早く水牛牧場の併設チーズ工場に出かけて出来立てを食べるしかないのだが、それでもモッツァレッラの最大の産地にあるナポリで昼食に食べれば限りなく00%に近いモッツァレッラ・ブッファラを味わうことができるとされているのである。

 私はナポリを初めて訪ねたとき、夕食に食べてその味わいの素晴らしさに感激したのだが、それも夕食だっただけに、昼よりも味が落ちていたはずだという。そんな話を聞いたら、ぜひとも昼に食わねばならぬ(笑)

 先にデキャンタに入れて運ばれてきた、氷を浮かべた(!)冷え冷えの白ワインが、ナポリの暑さの中を長距離歩いてきた体に何とも心地よい清涼感を与えてくれる。カンパニアのワインは味が濃く、少々甘いイメージがあったのだが、こうして古代からの伝統に従って(?)オン・ザ・ロックスで味わうとこれがまた不思議と引き締まった味わいになるのである。

 満を持して皿の上に乗ってやってきたモッツァレッラブッファラの美しいこと!
 前日ローマで鑑賞したベルニーニの彫刻を思わせる、乳白色の肌合いがつやつやと輝き、見るからに弾力に満ちたその色合いの力強さにほれぼれする。

 フォークを突き刺したときの、プツリとした感覚からして、このチーズがはじけんばかりのぷりぷり感を持っていることが分かる。ナイフで切ればジュワジュワと水牛乳が染み出し、口の中で起こるであろう同じことへの期待が否応なく高まる。

 いよいよ口に入る。まずはその表面の、つるりとした感覚が唇に、歯に、ほほに、舌にと広がり、その表面のきめ細やかさが、歯にこすれた時のキュ、キュッと鳴るかのような独特の歯触りとなって伝わる。

 満を持してかみしめれば、絶妙の弾力が歯を押し返し、ひと噛みで噛み切ることができないほど。その際、先ほど皿の上で起こっていたように口の中で水牛乳が絞ったスポンジから滴り落ちる水のごとくジュワジュワとあふれ出てきて、水牛乳特有のほんのり酸味の効いた甘い味わいが舌をくすぐってゆく。表面のキュッとした舌触りと、中心部の固まりきらない粘性の感応的な舌触りの対比がまた何とも素晴らしい。水分が絞りだされると食感は徐々に硬くなり、やがてプチンと切れ、チーズは喉の奥へと消えてゆくのである。この一口だけでも、ナポリに来た幸せを実感するではないか。

 地元民御用達故か、このモッツァレッラブッファラは私のこぶし二つ分はあろうかという巨大なもので、胃のキャパシティをかなり使用した模様である。そこで、プリモは見送って、セコンドにイカのグリルを注文した。

 イカを開いて、かまどの強力な炎で短時間で表面をカリッと焼き上げた香ばしい料理で、私の大好きなげそもたっぷり味わえる。オリーヴオイルとレモン汁と塩だけというシンプルな味付けが、新鮮なイカの甘味、柔らかさと相まって実にすばらしかった。例の白ワインが、また会うのである。

 すっかり満腹した私は、デザートを食べようともう一度メニューを見ていると、「フラゴリーノ」なるフルーツを発見。文字通りの小さないちごで、小指の先ほどの小さなイチゴそっくりの実を一つ一つ食べるのだが、これがなかなか酸味がきいていながら甘味も十分というもので、非常に美味であった。

 心行くまでナポリの昼食を楽しんだ私は、バスに乗り込み、カポディモンテ美術館へと向かった(続く)。
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