趣味の迷宮 ~LABYRINTHVS AD PARNASSVM~

作者Tiberius Felixの迷宮的な趣味に関する雑記帳。 主に音楽、映画、読書、語学、グルメなどの感想・論評を中心に、興味の赴くまま無秩序に迷宮的に書き綴っていくつもりです。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

トリスタンとイゾルデ~Don't think, feel it!

 gramophonさんがトリスタンとイゾルデの話題をここのところお書きになっているので、私も触発されてトリスタンとイゾルデについて書こうと思う。

 何を隠そう、ワーグナーの全作品の中で私が最も好きな作品がこのトリスタンとイゾルデである。

 あらすじをかいつまんで書くと、主人公が王様の婚約者と不倫し、その結果殺されてしまい、主人公の恋人も死んでしまうと言う話なのだが(こう書くとまるでイタリアオペラみたいに見えるのが不思議だ)、劇中で主人公二人が果てしなく長い愛に関する哲学的対話を延々と繰り広げるので(このあたりがドイツオペラなんでしょうね)、その内容がいろいろと議論されてさも難解な作品のように扱われることがある作品である。

 しかし、この作品は私の意見では、聴き方さえ覚えてしまえば実に判りやすい―否、理解を必要としない作品なのである。

 確かに歌詞は難しい。日本語訳で読んでも意味がよく分からないことをドイツ語で歌っているのだから、理解しようと思ったらとてつもない難行苦行である。そして歌詞だけでなく音楽も、やたら長くやたら複雑で、理解しようとするとやれライトモチーフがどうの、トリスタン和音がどうのとこれまた難行苦行である。
 だが、そういった思考をすべてストップし、ただただ音の響きに身をゆだね、何も考えず、純粋に『感じる』事を試みた時、世界は一変する。
 
 果てしなく続く、センシュアルな音の洪水。音と言う空気の振動が直接肉体にもたらす物理的な快感。官能にあふれた豊かな音楽が、そこには広がっているのだ。

 こうした聴き方で味わうのに最適の演奏は何か、と言うと、これがなかなか難しい問題である。まず、音そのものが透明感と温かみにあふれ、純粋に音色だけで心地よいものでなければならない。そしてテンポ設定も、早すぎず遅すぎず、自然な呼吸感覚で生理的に最も心地よいスピードであることが必要だ。

 この条件をともに満たす録音となると、ワーグナーをそれほど聴きこんでいるわけでもない私には正直判らない。テンポ設定の妙味ならばフルトヴェングラーが突出して素晴らしいが、音色となると、生演奏では透明感にあふれたそれはそれは美しいものだったと物の本には書いてあるにしても、録音では50年代の録音にありがちなシャキシャキ・キンキン・ザラザラした音感でどうもひとつよろしくない。逆に音色の美しさの点では、全曲録音ではないが前奏曲と愛の死を同時代楽器オーケストラで録音したノリントンのものがこれ以上ないくらい透明感にあふれた、たとえるならば真夏の炎天下で口にする冷たく美味しい井戸水の味わいのような音色で聴かせてくれるのだが、テンポ設定となるとかなり前のめりのハイスピードで、イゾルデが下世話な痴話喧嘩を始めかねない(失礼)雰囲気である。

 結局、今のところ私が聴いたことのある中では、両者のバランスが一番取れている盤はグラモフォンのカルロス・クライバーの録音であろうと思っている。しかし、録音年代の古さゆえ、音色の美しさにはやはり不満が残る。たとえばアバドがウィーンフィルを振って、あるいはヘレヴェッヘやブリュッヘンが同時代楽器オーケストラを振って全曲録音したら、どんなにか素晴らしいだろう、などと夢見てしまう。

 とりあえずは、gramophonさんの御覧になったアバドによる第二幕の映像を、私も見てみようと思っている。
スポンサーサイト

コメント

アバドはお勧めですよ。何なら今度お貸しします。

  • 2006/02/10(金) 15:44:17 |
  • URL |
  • gramophon #mQop/nM.
  • [ 編集]

おお!ありがとうございます。
では是非次回の蓄音機の會でお貸しいただけますでしょうか。
楽しみにしております。

  • 2006/02/11(土) 23:03:05 |
  • URL |
  • Tiberius Felix #-
  • [ 編集]

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://tiberiifelicis.blog10.fc2.com/tb.php/103-b25c0c75
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。