趣味の迷宮 ~LABYRINTHVS AD PARNASSVM~

作者Tiberius Felixの迷宮的な趣味に関する雑記帳。 主に音楽、映画、読書、語学、グルメなどの感想・論評を中心に、興味の赴くまま無秩序に迷宮的に書き綴っていくつもりです。

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ローマは一日にして回り切れず~迷宮的旅行記(7)

 ナポリからローマに戻った翌日、私はちょっと遠出してオスティア・アンティカの遺跡に行くことにしていた。

 オスティアというのはローマに集まる物資を荷揚げする港町で、ローマ人の物語を読んでいると何度も出てくる地名である。
ローマ最大の港町として繁栄したが、長年の間に海岸線が遠のいていき、港が公害に移転してからは凋落し始め、帝国の崩壊後疫病の流行でゴーストタウンとなり、海風の運ぶ砂の下に埋もれるに任せていたものが、20世紀に再び発掘された町である。
 町全体が丸ごと遺跡として残っているのはポンペイと同じだが、こちらは観光客に知られていないせいか人の姿はほとんど見かけず、広大な遺跡の中、ほとんど自分ひとりでじっくりと古代世界に遊ぶことができる、大変貴重な空間である。

 ここは遺跡全体が一種の公園のようになっている。、

 同じ町ひとつ丸ごとの遺跡でも、ポンペイは火山の大爆発と言う壊滅的災害で地に埋もれたため、建物の上部は降り注ぐ火山弾に破壊されてしまったところが多く、屋根の残った遺跡はほとんどなかったのだが、こちらは長年かけてゆっくりとやわらかい砂の中に埋もれていったため、砂粒に建物表面を削り取られはしても建物全体はその姿をとどめているものが多く、より『町』と言う印象が強い。それゆえにそのたたずまいはより強烈にゴーストタウン間をかもし出し、つわもの度もが夢の後、と言う一抹の儚さをも漂わせている。このような雰囲気の中を一人歩き回っていると、まるでファイナルファンタジーに出てくる古代遺跡のダンジョンを探検しているかのような非常に楽しい気分だ。

 このような感覚は、人気もまばらなオスティアでこそ味わえると言うものだろう。ポンペイのように人でごった返していては台無しだ。

 3階建て・4階建ての"インスラ"(ローマ時代のアパート)にまだ登ることができるのが特に貴重だ。2000年風雨にさらされたのに、いまだにしっかりと建っているのがすごい。

 昼食は、遺跡構内のカフェテリアで食べた。
 おそらく公務員が運営しているのであろう、来客人数を考えずに大量の料理を並べてある。そんなところに食べに行ったため、ラザニアからほうれん草の炒め物から、店員がすさまじい量をてんこ盛りにしてしまう。まあ、こういう食堂に味の期待をするのは野暮と言うものだが、ラザニアは悪くなかった。しかし、鶏肉のローストが、これは遺跡の中に転がる石ではないかと思えるほどがちがちに焼き固められていた。嗚呼!

 オスティアを隅々まで探検した私はローマに戻った。途中、アウグストゥス帝の時代にローマの支配下に入ったエジプトでピラミッドを見て感激したローマの金持ちが、自分の墓として作らせたと言う不思議なピラミッドに立ち寄った。
 ヘロドトスの『歴史』によれば、もともとピラミッドは石を階段状に積み上げた後、階段状の隙間を漆喰で生めて表面を平らにならし、その上を真っ白な大理石の化粧板で覆って白く輝いていたのだそうである。今では本家エジプトのピラミッドはイスラム教徒に化粧板をはがされ、隙間を生めた漆喰が風化して階段状の石積みだけが残っているが、ローマ時代はまだ白く輝いていたようで、このローマのミニチュアピラミッドも大理石の化粧版に覆われ、白く輝いている。もしかしたら、このピラミッドを先に見ておかなければ、本物のピラミッドを観たときピラミッドの本質をつかむことができないかもしれない、などと感じながら、ついでチルクス・マクシムス(チルコ・マッシモ)に向かう。

 ここはベンハーでおなじみ戦車競技が行われていた巨大サーキットであるのだが、文字通り"マクシムス(『おおきい」の最上級。英語『マキシマム』の語源)"で、果てしなく広い。いまでいえばF1のような感覚なのだろう。

 チルクス・マクシムスからさらに数十分歩き、カラカラ浴場へ向かう。ここも巨大の一言に尽きる。建物自体はさほど残っているわけではないのだが、残された建物のあとが7~8階建てのビルに相当しそうな非常に大きなもので、これ全体が浴場だったと言うのだからすさまじい話である。

 バスに乗ってテルミニ駅に向かい、ディオクレティアヌス浴場後に作られた国立博物館で碑文をじっくり読んで回る。大分読みなれてきたおかげで、略語の意味も分かるようになり、大分楽しめた。

 次いですぐ隣のマッシモ宮で、古代フレスコ画のコレクションを鑑賞する。
 
 ホテル近くのピッツェリアで軽く夕食を済ませ、ローマ初日にホテルのパンフレット置き場で見かけた15ユーロと言う格安料金で行われる、『椿姫』の演奏会形式の公演を見にヴェネト通り沿いのイギリス国教会らしき教会へ向かう。演奏は良質なもので、イタリアオペラ界の層の厚さを実感する。

 たまたま隣の席に座ったのが日本人の女性2人連れで、帰り道にはオペラの話で盛り上がった。残念ながらそれ以上の展開はなかったのだが……。(続く)
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