趣味の迷宮 ~LABYRINTHVS AD PARNASSVM~

作者Tiberius Felixの迷宮的な趣味に関する雑記帳。 主に音楽、映画、読書、語学、グルメなどの感想・論評を中心に、興味の赴くまま無秩序に迷宮的に書き綴っていくつもりです。

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続・ローマは一日にして回り切れず~迷宮的旅行記(8)

古代ばかりがローマではない。
この町には2000年の連続した歴史があり、古代に引けを取らないルネサンスという輝く時代がもうひとつあることは忘れるわけにはいかないだろう。

 と言うわけで翌日は早起きして朝一でヴァティカン美術館の行列に並ぶ。長蛇の列で世界に知られるこの美術館には、開場一時間前から並ぶつもりで出かけていったのだが、それでもすでに200m以上の行列ができている。おのずと最後尾へ向かう足取りは早足になるのだが、はるか彼方から団体旅行と思しき大人数集団が近づきつつあるのが目に入り、ついに私は最後の手段、全力ダッシュで滑り込みと言う荒業に出た(苦笑)。文字通り滑り込みセーフで大人数集団に競り勝つと、おそらく野球の本場から来ていると思われる私のすぐ前のバックパッカーのカップルがニヤリと笑って親指を上げ、"You've got it!"と祝福してくれた。

 ヴァティカン美術館のすごいところは、建物自体が巨大な美術品とも言うべきものであることで、かの『ラオコーン』を始め多くの古代彫刻に始まり、ルネサンスの宗教画の傑作群を経てついにミケランジェロの『天地創造』『最後の審判』で名高いシスティーナ礼拝堂に至る。

 ミケランジェロのこのすさまじい仕事は絶句するしかない強烈な迫力を持っていて、まさに息を呑むような人類史上有数の芸術作品である。このような空間で、アレグリのミゼレーレが演奏されていたと言うからさぞや荘厳な儀式だったことだろう。教皇選挙をするにふさわしい、すさまじい空間である。こういう教会がもし家から徒歩圏内にあったら、私ももっと敬虔なキリスト教徒になっていたかもしれない。

 システィーナ礼拝堂を抜けると、今度はラファエッロの壁画であふれた歴代教皇の仕事場がそれに続く。私はラファエッロの画風が好きで、こんな絵の中にいたらついつい眺めてしまってとても仕事にならないだろう。

 午前中たっぷりかけて美術館を見て回り、今度は隣のサンピエトロ大聖堂へ。これまた巨大で大変に荘厳な空間で、ミケランジェロの『ピエタ』をはじめたくさんの美術品であふれている。カトリックの総本山の名に恥じない、素晴らしい建築だ。こういう教会がもし家から徒歩圏内にあったら、私ももっと敬虔なキリスト教徒になっていたかもしれない。

 サンピエトロ大聖堂を後にした私は、教皇専用の秘密の抜け穴を通って、と言うわけには行かなかったが、すぐ近くのカステッロ・サンタンジェロに向かった。ハドリアヌス帝の墓所を中世に要塞に改造したこの建物は古代と中世が同居するような不思議な雰囲気をかもし出している独特の建物で、『トスカ』の舞台としても名高い。だから古代ローマとルネサンスとプッチーニをいずれも愛する私にとっては、壁に刻まれたハドリアヌス帝の辞世の詩を読んだり、1527年のローマ略奪でクレメンス7世がここに籠城したこと、そして城の屋上では『星は光ぬ』のメロディを頭の中に響かせながらトスカの身投げを思い描いたりと非常に忙しかった(笑)。

 サンタンジェロ城を出た後は昼食をとるため、ナヴォーナ広場へと向かう。奮発して有名なトレ・スカリーニに入り、プロシュート・メローネ(生ハムメロン)、アバッキオ、そして名物タルトゥーフォ(トリュフアイス)を味わう。
 海原雄山によれば、日本のマスクメロンを使ったのでは生ハムもメロンも台無しになるが、イタリアのロックメロンに本場のプロシュートを合わせると、互いが互いを高めあう大変美味な組み合わせになる、ということで、是非と思っていたのだが、さすが海原先生の言うとおり、日本で食べたことのないあっさりした黄色いメロンにプロシュートの熟成した旨味が合わさって大変美味しかった。本場のプロシュート自体、私はこのとき初めて食べたので、その、日本では味わったことのないしっとりとした食感と滋味豊かなコクに魅了され、この食材にすっかり一口ぼれしてしまった。
 そして売り切れで食べられなかったアバッキオである。オリーヴオイルに塩、胡椒、レモン汁でシンプルに焼き上げた、素材の味を生かした料理で、ラム好きの私にはこたえられない一品である。シンプルな料理法なので自分で作るのも簡単で、今でも時々近所のスーパーでラム肉を仕入れてきては作っている。
 名物のタルトゥーフォも大変チョコレートの濃厚な、ハーゲンダッツのチョコレートをさらに何倍も濃縮したような力強い味で、食べながらうっとりしてしまう。勘定は少々高くついたが、支払った以上の満足感は間違いなく得られた昼食であった。

 エスプレッソのダブルを飲みながら少し食休みし、再び歩き始めてマウゾレウム・アウグスティ(アウグストゥス帝の墓所)を訪れる。ハドリアヌス帝の豪華で圧倒的な墓所に比べると、初代皇帝のそれは幾分シンプルな雰囲気なのだが、墓所としてはよりそれっぽい雰囲気のような気がする。

 マウゾレウム・アウグスティの隣にあるアラ・パチスも見たかったのだが、修復中のため非公開であった。残念。

 そこからコルソ通りをまっすぐ歩き、マルクス・アウレリウス・アントニヌスの記念柱を眺めてトレヴィの泉でコインを投げ、パンテオンへ向かう。ローマ時代の建物で、建てられた当時の姿のまま残っている唯一の建物というその建物は、円形の大変特徴的な構造をしており、ギリシア・ローマを始め帝国領内のあらゆる神々のために捧げられた調和精神の神殿であった。内部は現在教会になっていて、かつてさまざまな神々を祭っていた台座にはさまざまな聖人たちが祭られており、その下にはラファエッロをはじめさまざまな著名人が葬られていた。

 パンテオンを後にした後、すぐ近くのサンテ・エウスタッキオと言うバールで、ここのは大変に美味しいと言うエスプレッソを味わう。確かに濃さがほかとは格段に違う気がする。表面に浮く泡のクリーミーさも、ひときわ強いように思える大変美味しいエスプレッソだった。

 次は天に昇る聖母マリアと天使、聖人たちをだまし絵に描いた天井画のあるジェズ教会と言う教会を見に行くつもりだったのだが、途中で道を間違えてしまい、ふと気づくと立派な神殿の遺跡が3つほど固まった一角に出てきた。
 ガイドブックをめくってみるとそこはどうやら共和政時代の神殿の跡で、そのうちひとつはポンペイウスが作らせたものらしい。ちょっとした拾い物のような気分でもと来た道を引き返し、ジェズ教会へとたどり着いた。

 騙し絵の天上画は本当に人が天に昇っているように見える大変リアルなもので、この絵の下で祈れば本当に天国に行けそうな気になってくる。こういう教会がもし家から徒歩圏内にあれば、(以下同文)。

 昼食を奮発したのでその日の夕食はピッツァで軽く済ませ、早めに眠りに着いた。(続く)
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