趣味の迷宮 ~LABYRINTHVS AD PARNASSVM~

作者Tiberius Felixの迷宮的な趣味に関する雑記帳。 主に音楽、映画、読書、語学、グルメなどの感想・論評を中心に、興味の赴くまま無秩序に迷宮的に書き綴っていくつもりです。

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歌え、歌え、休符も歌え!

 表題は、イタリアの巨匠指揮者トスカニーニの言葉である。
 これは少々極端な例にしても、音楽においては『歌う』ということが非常に重要なファクターであることは間違いない。

 一説によると多くの楽器は人間の歌声を目標として発展したのだそうだが、その中で最も人間の歌声に近づくことに成功した楽器は弦楽器ならばヴァイオリン、管楽器ならばサックスなのだそうである。

 そういわれてみれば確かに、ヴァイオリンもサックスも、歌うことが大変に得意な楽器だ。前者はクラシック、後者はジャズ、というイメージが定着しているが、たとえばベートーヴェンしかり、メンデルスゾーンしかり、ソナタでも協奏曲でも、ヴァイオリンはやはり高らかに歌う印象が強いし、『枯葉』のキャノンボール・アダレイしかり、『セント・トーマス』のソニー・ロリンズしかり、サックスはやはり朗々と歌うイメージがある。トレーンのシーツオヴサウンドにしても、特に『至上の愛』などでは、やはり力強く歌っている。

 しかしながら両者は、それぞれのホームグラウンド以外ではあまり登場しない印象もある。サックスを前面にフューチャーしたクラシックの曲といってもあまりメジャーな作品にはお目にかからないし、ヴァイオリンのジャズ、というのもきわめてレアだ。

 昨夜、そんなレアなジャズのヴァイオリンを聴く機会を得た。コヴァさんのギターの師匠が、ジャズヴァイオリニストとのデュオでライヴをやる、というのでコヴァさんにお誘いいただき、はらださんと3人で元町のバーでたっぷり3ステージを堪能してきた。

 ヴァイオリンはジャズでも歌う。ギターの語りにヴァイオリンの歌が寄り添う。第一ステージでは、それぞれに多少のディスコミュニケーションが見られる局面も多かったものの、第二ステージでは互いの呼吸は一致してゆき、第3ステージでは語るギター、歌うヴァイオリンのグルーヴィーな対話が繰り広げられ、大変に心地よい演奏であった。

 特に圧巻は第3ステージの『ジャンゴ』だった。
 実は第二ステージを聞き終えたところで、このデュオがジャンゴを演奏したらどんなにかいい演奏になるだろうか、とコヴァさんと話していたのだが、休憩中に師匠に挨拶に行ったコヴァさんが聞いてみたところ、何と当初からジャンゴは第3ステージの演奏予定曲だったのだという。なんだか自分の選曲センスをプロに認めてもらえたようで嬉しかった。

 『ジャンゴ』の演奏は大変素晴らしかった。
 ヴァイオリンの切々とした歌が、この曲のメロディの物悲しくそれで居ながら格調高い独特のセンスを余すところなく描き出し、ギターの語りがそれをしっかりと支える。時にはヴァイオリンの歌がギターの語りをサポートする。峰厚介と菊池雅章のデュオによるCDで聴いた、サックスが強烈な内に秘めた情熱をマグマのようにたぎらせる熱い歌を聴かせてくれる強烈な演奏に匹敵する、名演であった。

 ヴァイオリンで歌うジャズ、というのも、なかなか乙なものである。
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