趣味の迷宮 ~LABYRINTHVS AD PARNASSVM~

作者Tiberius Felixの迷宮的な趣味に関する雑記帳。 主に音楽、映画、読書、語学、グルメなどの感想・論評を中心に、興味の赴くまま無秩序に迷宮的に書き綴っていくつもりです。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

古代ギリシア風の食卓~ワインと子羊肉

 職場の近くのワインショップが、半月ほど改装に入るらしく、在庫一掃セールをやっている。

 このワインショップは大変品揃えの良いワインショップで、以前捜し求めていた辛口ランブルスコ(ボローニャで味を覚え、以来時々飲みたくなる)をこのショップで発見して以来、個人的に信頼している店である。

 で、その品揃えの素晴らしい店が在庫一掃というので、掘り出し物を漁りに行ってきた。そこで見つけたのは、かつて古代ギリシアで、オリンピアの祭典の勝者に振舞われたというチロ産のワインである。

 チロは南イタリアのギリシア植民都市に端を発する古い町で(といっても、イタリアの町のほとんどは古い町なのだが)、「エノトリア」(『ワインの土地』の意)と呼ばれるほどの一大ワイン産地であった地区にある町である。

 説明書きによると、このワインはどっしりとした味わいで、赤身の肉料理に合うそうである。しからば、オリンピアの祭典で、勝者がこのワインとともに食したであろう、オリュンポスの神々への生贄の子羊の肉を合わせるのが一興というもの。そこで、ラムチョップを買ってきて焼いて食べることにした。

 ホメロスの『イリアス』に出てくる古代ギリシアの生贄の儀式の描写によれば、生贄の子羊の肉は―古代ギリシアの習慣では、生贄として神々に捧げるのは、肉を焼く「煙と匂い」で、焼いた後の肉は『神々のお恵み』とでも解釈しているのであろうか、人間が食するのだったーいったん丸焼きにした後小さく切って串に刺し、直火であぶり焼きにして儀式の参列者に配り、参列者は各自塩につけながら焼きあがった串焼きの肉を食べていたという。私もそのひそみに倣い、炭火で焼きたいところではあるが七輪がないのでガス火で妥協し、直火のあぶり焼きに塩をつけて食べてみることにした。

 ラムチョップということもあるので、小さく切って串刺しにはせず、焼き網に載せて直火であぶって表面をこんがりと焼き、火が通り過ぎないころあいを見計らって塩につけながら食べてみた。

 ラムの直火焼きは、ガス日の直火だったせいで、ガスが燃焼するときに発生する水蒸気に蒸されて少々湿っぽかったが、ラムの脂が焦げて生じる芳香がいい感じについていて香ばしい。表面を軽く焦げ目がつく程度にあぶり、中身は赤さが残るように焼き上げ、塩をつけながら食べると、シンプルながら野趣あふれる力強い味わいで、なかなか乙なものである。現代人の感覚では、ここに少々胡椒の香りと辛味を付け加えたいところだったので、誘惑に負けて胡椒を振ってしまった。やはり胡椒が加わったほうがより美味い。

 ワインは、説明書きの通り、どっしりとして力強い味わいなのだが、それでいてフルーティーでもある、という、非常に稀有な味わいを持ったワインで、なるほど勝利の美酒にふさわしい味わいともいえるだろう。

 いずれにせよ、きっと古のギリシア人たちが味わった味わいは、きっとこういうものだったのであろう。味覚のタイムスリップ、というのも、なかなか楽しいものである。
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://tiberiifelicis.blog10.fc2.com/tb.php/181-3b25ff56
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。