趣味の迷宮 ~LABYRINTHVS AD PARNASSVM~

作者Tiberius Felixの迷宮的な趣味に関する雑記帳。 主に音楽、映画、読書、語学、グルメなどの感想・論評を中心に、興味の赴くまま無秩序に迷宮的に書き綴っていくつもりです。

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エンリコ・ガッティ、あるいは命が惜しくなる響き~その1

 音楽の楽しさはさまざまな要素から成り立っている。
 
 メロディーの面白さ、美しさも重要な要素であるし、リズムの心地よさも欠かせない。通人ならば低音のコード進行やハーモニーにもこだわるだろうし、演奏者のフィジカルなテクニックのすごさも魅力であろう。歌ならば歌詞も重要だ。

 しかしそれでもなお私が第一にひきつけられる音楽の魅力―それは音色である。美しい音色を聞いたときの、本能的な恍惚感にはどうにも抗うことのできない強烈な力がある。理屈を超越した、本能的な何かが刺激されるのである。

 そうした音色への、ある種フェティッシュなこだわりを持つ私に強く訴えかけるもののひとつに、ガット弦(羊の腸で作られた弦)を張ったヴァイオリンの音色がある。
 通常、ヴァイオリンの弦にはスティール製のものが使われ、いわば針金をこする音を聴いているのであるが、バッハやモーツァルトが聴いていたであろう古い時代のスタイルをコピーした楽器の場合、ガット弦を使用して演奏するのが普通である。そのような時代には、ヴァイオリンの弦にするような細い針金を作る技術がまだなかったのである。

 このガット弦を張ったヴァイオリンというのは実に柔らかで滑らかでふわりとした音色を作り出してくれるのである。ギリシア神話で半神半人の音楽家オルフェウスが竪琴の音色の美しさで凶暴な地獄の番犬ケルベロスをなだめ、てなづけてしまうという話があるが、ガット弦のヴァイオリンの音色を聴いていると本当に地獄の番犬でもてなづけられるかもしれない、などと思ってしまうほどである。

 そのように美しい音色を作り出すガット弦であるが、そこから音を作り出すのは無論演奏家の仕事であり、どこまで美しい音色を作り出してくれるかは文字通り、演奏家の腕にすべてがかかっているわけである。

 そして、数多くのガット弦の扱いに長けた演奏家たちの中でもずば抜けて美しい音色をつむぎ出す演奏家がひとりいる。彼の名はエンリコ・ガッティ。知る人ぞ知る古楽器(ガット弦を張ったヴァイオリン等、古い音楽を演奏するためにその時代のスタイルで作っ手ある楽器をこう呼ぶ)専門のイタリア人ヴァイオリニストである。

(次回へ続く)
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