趣味の迷宮 ~LABYRINTHVS AD PARNASSVM~

作者Tiberius Felixの迷宮的な趣味に関する雑記帳。 主に音楽、映画、読書、語学、グルメなどの感想・論評を中心に、興味の赴くまま無秩序に迷宮的に書き綴っていくつもりです。

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蓄音機の会

 毎月新橋駅近くのビストロ・ベルランと言うレストランで蓄音機でSPレコードを聴く会というのが開かれていて、かれこれ2年ほど通っている。

 先週の土曜にも会が開かれ、今回も行ってきた。

 蓄音機と言うと、知識で知っている人は多いであろうが、実際にその音を聞いたことのある人は大変少ないと思われる。
 レコード盤に刻まれた溝を針でなぞって音を出す仕組みなのだが、注目すべきなのは、電気を一切使用していないことである。
 ご存知のとおり音と言うのは空気の振動である。この振動をメガホンの根元に取り付けた針に伝え、針の振動をレコード盤の溝に刻み付けて記録する。この刻み付けられた溝を再び針でなぞると、もともと記録されたときと同じ振動を針が再現する。その振動を空気に伝えメガホンで拡声すれば、最初に鳴っていた音が再現されると言うわけである。
 この仕組みを発展させ、振動をいったん電気信号に変換して保存・再生すれば後のLPレコードとなるし、さらに電気信号をデジタル式にし、レコード盤の溝ではなく光の反射の形で保存すればCDとなる。
 
 もちろん、音の振動を直接針に伝え直接溝に刻み、それをまた直接針でなぞって直接拡声するのでは、摩擦や振動体の影響によりエネルギーにロスが生じ、音質は変わってしまう。そのロスを減らしてなるべくもとの音そのものに近い形で
記録するために、上記の技術の進歩が起こったのである。

 しかし、私はもちろん最新の技術による原音に限りなく近い音を高く評価するのだが、その一方で、このおおいにエネルギーをロスし、原音からだいぶ変質した蓄音機の音色もとても愛しく思えるのである。「原音からの変質」と言うと何か悪いことのように聞こえるかもしれない。しかし、この変質は、言ってみれば優れた画家が対象をうまくデフォルメし、写真以上に対象の特徴を生き生きと描き出すようなもので、逆に原音の存在感はむしろ強められ、デフォルメされたがゆえに生み出される力強い生々しさが伝わってくるのである。

 それに、直接振動を刻んだSPの再生と言うのは、いわば100年前の大家の作り出したまさにその空気の振動を、100年の時空を超えて直接再現することに他ならない。百年の時空を越えた空気の振動がそこにある、と言うのはなんともロマンティックではないか。

 蓄音機の会。それは、時空旅行の会でもあるのである。
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