趣味の迷宮 ~LABYRINTHVS AD PARNASSVM~

作者Tiberius Felixの迷宮的な趣味に関する雑記帳。 主に音楽、映画、読書、語学、グルメなどの感想・論評を中心に、興味の赴くまま無秩序に迷宮的に書き綴っていくつもりです。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

天国的音楽の天国的演奏~モーツァルトのK.617

 モーツァルトのK.617、すなわちグラスハーモニカ、オーボエ、フルート、ヴィオラ、チェロのためのアダージョとロンドは、まさに天国的と言う言葉にふさわしい、知る人ぞ知る隠れた名作である。

 グラスハーモニカと言うのは、かのアメリカ合衆国黎明期の指導者の一人、ベンジャミン・フランクリンが発明したと言う珍しい楽器で、音程を整えたガラスの筒を指でこすって音を出すと言う独特の楽器である。

 その音色は実に神秘的・天国的で、一度聞いたら忘れられない不思議な魅力を持っている。

 ちょうどモーツァルトの晩年にウィーンにこの楽器の天才少女演奏家がやってきて、名人芸を披露し、大いにもてはやされた。これを聞いたモーツァルトが彼女のために作曲したと言うのがこの作品らしいのだが、使用する楽器の特殊さゆえに演奏される機会は極めて少なく、しかもグラスハーモニカは別の楽器で代用されることが多い。

 私がこの曲をはじめて耳にしたのは高校のときで、NHK教育のN響アワーで取り上げられていたのをテレビで見たときのことだった。そのときはグラスハーモニカをチェレスタで代用した演奏だったのだが、そのチャーミングなメロディが強く印象に残った。

 これはぜひともオリジナル編成の同時代楽器による演奏がほしい、と強く思ったのだが、曲自体がマニアックな上に使う楽器もマニアックとあって、この曲自体の録音が極度に少なく、当然ながらオリジナル編成の同時代楽器による演奏など、夢のまた夢と言う状況であった。

 以来8年。私は常にこの曲の新録音を待ち続けていた。グラスハーモニカを使用しているがアンサンブルがモダン楽器の演奏、アンサンブルはオリジナル楽器だがグラスハーモニカはフォルテピアノで代用している演奏など、どれも画竜点睛を欠くもので、ずっと歯がゆい思いをし続けていたのだが、ついに今日、この曲のオリジナル編成の同時代楽器による演奏を手に入れた。

 カヴァッリと言うあまり知られていないレーベルから出た、パウル・アンゲラー指揮コンシリウム・ムジクム・ウィーンによる録音で、CD番号はCCD448である。

 冒頭のアダージョがトッティによるハ短調で奏でられ始める。物憂げで儚いメロディを、倍音の多いグラスハーモニカの音色がささやくように奏でていく。

 やがて音楽は長調に転じ、テンポをゆっくりめのアレグロに上げてロンドが始まる。一度聴いたら決して忘れない、とてもチャーミングで、天使の歌のような、まさに天国的としか言いようのない心地よいメロディを、これまた天国的としか言いようのないグラスハーモニカの幻想的な音色に同時代楽器の温かみにあふれたアンサンブルの音色が重なりあって描いてゆく。

 どこまでも透明で、どこまでも暖かく、まるで雲の隙間から漏れ出る光の階段のような音楽。なぜか聴いているうちに涙が流れ出していた。

 こんなに感動したのは本当に久しぶりだ。
 仕事のストレスも、プライヴェートな物憂い諸々も、何もかも洗い流すかのような感動が、魂を浄化してくれる。

 この一曲は、レクイエム全編にも匹敵する素晴らしい作品である。ひょっとするとモーツァルトの最高傑作なのかもしれない、とさえも私は感じている。
スポンサーサイト

コメント

グラスハーモニカ

学生の頃、喫茶店で水の量を変えて、和音を作ろうと企んだことがあります。結構大きな音が出て、顰蹙を買い、結局ガボガボになっただけでしたが…。

  • 2006/11/07(火) 17:51:02 |
  • URL |
  • gramophon #mQop/nM.
  • [ 編集]

喫茶店で、と言うのが面白いですね(笑)
いまだったら、お店を閉めた後に遊んでみたりとか・・・!?

  • 2006/11/08(水) 00:14:17 |
  • URL |
  • Tiberius Felix #-
  • [ 編集]

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://tiberiifelicis.blog10.fc2.com/tb.php/228-6e835f9c
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。