趣味の迷宮 ~LABYRINTHVS AD PARNASSVM~

作者Tiberius Felixの迷宮的な趣味に関する雑記帳。 主に音楽、映画、読書、語学、グルメなどの感想・論評を中心に、興味の赴くまま無秩序に迷宮的に書き綴っていくつもりです。

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いよいよ天才的になってきた~モーツァルトフォルテピアノ協奏曲全曲レヴュー(16)

 第18番変ホ長調、K.456。

 『盲目の天才ピアニスト』として当時大人気だったフォン・バラティス嬢の注文を受けて作曲された作品である。彼女が計画していたコンサートツアーの目玉にするつもりだったようである。

 第一楽章は、いかにも人気ピアニストのコンサートの目玉にふさわしいサーヴィス精神たっぷりの作品で、楽しませてくれる、当時としてはごく標準的な-しかし、ごく高水準のー作品である。

 しかし、すごいのは第二楽章で、当時としては協奏曲に使うとは思いもよらぬト短調(!)のメランコリックなメロディがため息をつくかのように繊細に歌われ、それが変奏曲として次々に展開されていく。それはやがてバロックの宗教音楽のような重厚な対位法に発展するのである。この驚くべき展開は息を呑むようだ。

 第三楽章では、第一楽章のサーヴィス精神が戻ってくるが、その一方で第二楽章のメランコリーをふと思い出したかのように暗い情熱を奏でる場面もある、性格豊かなロンドである。

 ソフロニツキの演奏は、特に第二楽章の切々とした表情が特筆すべき出来である。第一楽章のサーヴィス制芯も不足はないし、第三楽章の性格の弾き分けも充実している。

 いよいよアマデウスの天才性を感じさせるようになったこの作品は、それゆえか同曲異演も多く、おなじみビルソン・レヴィン・インマゼールに加えてシュタイアーとタンが演奏している。

 シュタイアーとレヴィンは似た傾向で、速いテンポで切れ味鋭くバリバリグイグイ弾き進めていく。シュタイアーは激情型、レヴィンは饒舌型なのはいつものとおりである。シュタイアーの演奏する第二楽章は、テンポの速さとコントラストの強調ゆえに、メランコリックなしっとり感は失われているものの、その代わりにト短調ならではの激情がたっぷりと味わえる。

 メルヴィン・タンの演奏は非常に繊細で、ちょっとした強弱、速度のかすかな操作が斬新な感覚をもたらしている。と同時に、レヴィン以上の饒舌なアドリブを駆使して雄弁に語る。彼の第二楽章は非常に独特である。

 いつもながら、語りのうまさではビルソンとインマゼールの演奏である。ビルソンは、ここでは声のトーンを落としてゆったりと、一音一音を味わうように語る、いわば朗読的な演奏を聴かせる。対して、ここでのインマゼールのほうは、聴衆の耳目を集め、巧みな表情と話術を駆使して語る、いわば演説的な演奏を聴かせる。
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