趣味の迷宮 ~LABYRINTHVS AD PARNASSVM~

作者Tiberius Felixの迷宮的な趣味に関する雑記帳。 主に音楽、映画、読書、語学、グルメなどの感想・論評を中心に、興味の赴くまま無秩序に迷宮的に書き綴っていくつもりです。

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キターーーーー!~モーツァルトフォルテピアノ協奏曲全曲レヴュー(19)

 第21番ハ長調、K.467。

 モーツァルトのフォルテピアノ協奏曲の最高傑作である(断言)。一般の評判は別として、少なくとも私の中では。

 この音楽はまさに快楽そのもの、一つ一つの音の動きそれ自体がこの上なく快く楽しいのだ。断言しよう。物理的に存在するあらゆる音の順列組み合わせがあったとして、その中でもっとも生理的に気持ちいい音の並び方がこの曲であると。この曲を書いたという事実があるだけでモーツァルトが音楽史上最大の天才であることを物語っているし、やはりこれほどの作品はアマデウスクラスの天才でなければ生み出しえないものだろう。

 というわけで、この曲はきちんと演奏しさえすれば無条件に気持ちよい曲である。しかしながら、いや、だからころ、ちょっとでも演奏がゆがむと台無しになってしまうハイリスクな曲でもあるのだ。それゆえこの作品を敬遠する演奏家も多いと聞く。だからわれわれは、ある演奏家がこの作品を録音してくれたらそれだけでももう感謝すべきだ。

 ヴィヴィアナ・ソフロニツキの演奏はこの曲の快楽を前面に押し出したすばらしい演奏である。非常に速いテンポで空を飛ぶかのような目くるめく音階を弾きこなす。ヴィヴァ、ヴィヴィアナ!とくに、オケとフォルテピアノとの音量バランスが非常に良く、ヴィヴィッドに輝く彼女の楽器の音色もまた一役買っている。

 同曲異演は、完全なオリジナル楽器によるものとしては、ビルソン、インマゼール、デムス、コーエン、ニコルソンの5種類。もうひとつ、クレッパーという演奏家のフォルテピアノと一部古楽器を混ぜたモダンオケ(ファイ指揮)による演奏がある。

 注目は、第10番でソフロニツキとすさまじい斬り合いを演じてのけたニコルソンの演奏だ。
 ところがここではニコルソンは、第10番とは別人のように落ち着いていて、一粒一粒の音符をよく噛んでじっくり味わうような天国的な演奏を繰り広げている。
 F15戦闘機で大空を駆け巡るのがソフロニツキとすれば、ニコルソンはツェッペリン飛行船でゆったりのんびり遊覧飛行といった感じであろうか。

 この曲の演奏は大体このような戦闘機タイプか飛行船タイプ化に分けられるように思われる。ビルソンとデムスは戦闘機型で(とはいえ、ソフロニツキがF15とすれば彼らは零戦とでも言った所だろうか)、インマゼールは飛行船型である。レヴィンの全集が未完成であるため、彼の録音がないのが残念だ。彼がモダンピアノ(おそらくベーゼンドルファー)を用いてラトル指揮ベルリンフィルと録音した非正規盤を聞いたことがあって、モダン楽器という重いハンデをものともせずにすばらしい戦闘機型の演奏を繰り広げていただけに、これがフォルテピアノに古楽器オケだったら一体どんなにかすばらしい録音が生まれたろうと残念でならない。残念ながら存在しない録音だが、メルヴィン・タンはきっと飛行船方の素敵な演奏をしてくれるだろうし、シュタイアーはきっとソフロニツキ以上の強烈な戦闘機型の演奏をしてくれるだろう。妄想が止まらない(笑)。

 ところが今回もまた、枠に入らないのが、ひねくれ競争まっしぐらのコーエンの演奏である。非常に癖のあるフレージングで奇妙なテンポ・ルバートを入れたりして、物理的に空を飛ぶというよりも大酒をかっくらってグラグラした感覚に近い(笑)。きっと翌朝大変だ。

 いずれにしても、もっとこの曲の録音が出てもいいのになぁ、と思うのだが。
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