趣味の迷宮 ~LABYRINTHVS AD PARNASSVM~

作者Tiberius Felixの迷宮的な趣味に関する雑記帳。 主に音楽、映画、読書、語学、グルメなどの感想・論評を中心に、興味の赴くまま無秩序に迷宮的に書き綴っていくつもりです。

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「サイドウェイ」

 時間通りに映画館に入って映画を見ると、最初の十五分くらいは予告編が上映される。
 映画の予告編と言うのは実にうまく作ってあるもので、場合によっては本編以上に印象が強烈だったりする。
 この映画もそんな予告編の印象が強烈に残った一本で、是非見に行こうと思っていたのだが、公開時期が3月決算監査の地獄の繁忙期と重なり、地味な短観上映映画と言うこともあって監査が終わる頃には映画も終わってしまったという悲しいいきさつを背負った映画なのであった。

 で、職場の友人に勧められた映画を探すべく東神奈川のつたやに立ち寄ると、新作コーナーにDVDが並んでいた。おお、やっとあの映画にめぐり合えた、といそいそとレジにもって行き、借りる。

 この映画は、中年を迎え人生に漠然とした諦念を抱き始めている上に、妻に去られてしまったショックからいつまでも立ち直れない主人公が、小説を出版すると言う夢にようやく手が届くかどうか、と言うところ、プレイボーイの友人がついに結婚すると言うので「独身最後の馬鹿騒ぎの旅」に付き合うことになる、と言う典型的ロードムービーで、お約束どおりいくつかのトラブルが生じ、主人公たちは傷つきながらも結局ハッピーエンドで終わるというものなのだが、面白いのはその旅がカリフォルニアのピノノワールシュのワインを作るワイナリーめぐりをするという設定である。

 ピノノワールというのはブルゴーニュで作られている大変に繊細な味わいを持つ品種で、このぶどうで作られるワインは土壌や天候や製法の影響を受けやすく、ロマネコンティに代表されるような、良質の土壌で細心の注意をもって作られたものは天井知らずの美味をかもし出す一方、ひとつ間違えれば底なしのまずいワインができてしまう、と言うハイリスクな品種である。

 ブルゴーニュ以外の土地で栽培するのは、機構や土壌の関係で難しい品種だが、それもカリフォルニア、ニュージーランド、チリなどで栽培に成功している例が見られ、特にカリフォルニアで多く作られているそうである。

 そんなわけで、業界では「カリピノ」などという略称で呼ばれるほど定着したカリフォルニアピノノワールワインの話という期待で借りたのだが、期待を裏切らない良質な映画だった。

 傷つきやすい主人公の性格はピノノワールのようで、映画の
作者はそれを主人公の(見掛けに似合わぬ)繊細さの暗示に用いたかったのかもしれない。そんな繊細な主人公は、さまざまなものを失うが、最後の最後に希望の光が差し込むのである。アメリカ映画にありがちな安易なハッピーエンドと言ってしまえばそれまでなのだが、夢と現実の間で引き裂かれるような思いを一度でもしたことのある人ならば-特に男ならば、主人公の気持ちは痛いほどよく分かるはずであるし、だからこそ安易なハッピーエンドであっても受け入れたい気持ちになるはずだ、と私は考えている。確かにこの結末は、特に女性から見れば、ありえないといわざるを得ない。しかし、ありえないからといってこの結末を笑うのは、叶わぬ夢を思い描いたことのない人だけだ、と私は思うのだ。

で、この映画の余韻に浸るため、「カリピノ」を味わおうと重い、一本買ってきたのだが、店に一本だけ置いてあった非常に安いものを買ったせいか、ピノノワールで間違えると大変なことになるということを学ばされるような強烈な大外れであった、

実はこのワインは無果汁で主成分は果糖ブドウ糖液糖香料着色料なのではないか、と疑いたくなるような、気の抜けたフxXタグレープのような味のする猛烈に甘ったるい代物で、口の中の甘さに反比例して心の中に苦々しさが広がるようなワインだった。

ああ、人生は映画のようにはうまくいかないなぁ。
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