趣味の迷宮 ~LABYRINTHVS AD PARNASSVM~

作者Tiberius Felixの迷宮的な趣味に関する雑記帳。 主に音楽、映画、読書、語学、グルメなどの感想・論評を中心に、興味の赴くまま無秩序に迷宮的に書き綴っていくつもりです。

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円熟の響き~モーツァルトフォルテピアノ協奏曲全曲レヴュー(22)

 第24番ハ短調、K.491。

 もうひとつの短調作品である。
 最初の短調作品20番(ニ短調)は、初めての、そして当時としてはきわめて実験的な短調協奏曲ということで、情熱の裏に見え隠れする野心、という雰囲気を持っていたが、今度の作品は二回目ということもあって、より洗練・円熟した、一種の余裕のようなものが感じられる。

 第一楽章はハ短調の緊迫感をめいいっぱいあおりながら始まるのだが、やがてメロディは落ち着きを取り戻し始め、一大建築物のような構造的な安定感を見せてゆく。22番以降の管楽器の活躍もここに来て頂点に達したといってよいだろう。
 第二楽章では変ホ長調に転じ、しっとりした歌をたっぷりと聴かせてくれる。
 第三楽章は変奏曲形式により、第一楽章を超える交響的かつ構造的な音楽が繰り広げられる。それでいて、歌心を忘れないところが流石アマデウスである。

 ソフロニツキはスピーディなテンポ設定でグイグイと推し進めるように演奏する。非常に独特なのは、オケの伴奏も含めて奏でられている音が極めて明瞭に分離して聴こえ、作品の構造が非常にはっきりと耳で聴き取れる事である。叙情性や歌心といった面では、少々不足を感じないでもないが、あたかもまだ口をパクパク、えらをばたばたさせている生け造りの魚のような素材の味をこの上なくシンプルかつストレートに味わわせてくれる演奏には間違いない。

 同曲異演はビルソン、インマゼール、タン、ギボンズと4種類。通好みの作品であるせいか、あまり多くはない。

 インマゼールの演奏はソフロニツキとは対極と言った風情で、オケとフォルテピアノのサウンドの溶け合いが非常に心地よい。ゆったりしたテンポでよく歌わせるので、この作品の叙情性を味わうには最適の演奏である。

 ビルソンの演奏は、落ち着いたテンポと弱音表現の多彩さが特徴で、20番に比べて感じられる余裕の表情が非常に良く現れた演奏といえるだろう。

 タンの演奏も、ビルソンとは別の意味で余裕の表情が感じられる。彼ならではの指の良く回る、メカニカルの強さと、ノリントンの指揮ならではの随所に凝らされたフレージングの工夫が非常に知的に面白く、演奏家たちの余裕の表情がこれを作曲したモーツァルトの余裕の表情を想起させるのである。

 ギボンズの演奏は、ブリュッヘンの骨太の指揮とあいまって、非常に力強く、この作品のハ短調ならではの悲壮感を前面に押し出している。まるでベートーヴェンの協奏曲第三番のように重厚な響きだ。
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