趣味の迷宮 ~LABYRINTHVS AD PARNASSVM~

作者Tiberius Felixの迷宮的な趣味に関する雑記帳。 主に音楽、映画、読書、語学、グルメなどの感想・論評を中心に、興味の赴くまま無秩序に迷宮的に書き綴っていくつもりです。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ジビエの女王ベカス

 こうやって書くとなんだかオペラ・セリアのタイトルみたいだが(例:「クレタの王イドメネオ」)、ジビエというのは狩で捕まえた獲物の肉を量視して食べる料理のことを言い、そのジビエの仲でも女王と称される貴重な食材が、ベカスという鳥である。

 そのベカスを、つい昨日の日曜日、ついに味わうことが出来た。
 冬のボーナス消費予算の大トリである。

 私がジビエやベカスの存在を知ったのは2004年の年末のことだったのだが、そのベカスの話を聞いて、これはぜひとも食べねばならぬ、と固く決意すること早2年。さすがにジビエはフレンチの最高峰、一人で食べに行くようなものではないので、機会をうかがい続け、ようやく話に乗ってくれる友人が現れ、念願成就となったわけである。

 さて、知る人ぞ知るジビエ料理の名店にオードヴル・スープ・ジビエ・デザートのコースを予約して、横須賀線に総武線を乗り継いではるばる平井まで尋ねてゆく。

 まずは食前酒に私はグラスシャンパーニュを、友人はキールロワイヤルを注文し、アミューズのアンチョビのオイル漬けでコースが始まる。
 アンチョビはケッパーと黒胡椒を中心にスパイスできりっとした香りに仕上げられており、ブリュットなシャンパーニュの味わいと意外に良くマッチする。

 食前酒が空くと、ワインの注文だ。
 ソムリエさんにベカスに合うものを薦めていただく。私は赤ワインはどんなに重くとも大歓迎なのだが、同席の友人は軽めのものが好みだったので、二つ薦められたうち、ローヌのグルナッシュのほうを注文。

 このワインは一口含んだときの味わいは大変ふわりと軽やかで、南仏らしい華やかさにあふれているのだが、香りは一転、あたかもバッハのオルガン曲のごとく対位法的に複雑で、のどを通した後の香りの余韻がとても長い。これは料理とあわせるのが楽しみだ。

 オードヴルに、私はエゾシカのカルパッチョを、友人はオマール海老のブーダンをチョイスした。

 エゾシカは立派なジビエで、赤ワインでマリネされ、香草で香り付けされた豊かな味わい、舌の上でしっとりととろけてゆくような官能的な食感が、軽やかでありながら複雑な香りのワインと寄り添って大変美味である。それはあたかもヴァイオリンのアンサンブルが奏でるフーガに、チェロの低音伴奏が参加したようなもので、互いが互いを引き立てながら豊かな味のハーモニーを響かせるのであった。

 次はスープである。

 私は鶏がらスープをベースに青菜のピューレを溶かし込んだあっさり風味のスープを選ぶ。
 これがまた、鶏がらのコクと青菜のさっぱりした風味がバランスよく合わさって、大変おいしかった。

 そしていよいよ、メインディっシュのベカス(写真)。

 20070122234358.jpg


 ベカスは捨てるところのないとりで、頭は丸ごと真っ二つに割り、脳みそを味わう。足も丸ごとグリルして豪快に手で食べる。レバーはペーストにしてクロスティーニ的に、そして胴体の正肉は、レアにローストしてフルーツとワインとベカスの血で作った濃厚なソースで味わうのである。

 ベカスの肉の濃厚な味わい、力強さ、繊細にくみ上げられたソースのこれまた対位法的味覚世界、どれをとっても女王の名にふさわしい。
 脳みそのとろけるようなクリーミーな味わい、レバーの滋味あふれる味わい、腿肉の引き締まった歯ごたえ、正肉のしっとりとした舌触りに、それでいながらしっかりとした歯ごたえ。何もかもがすばらしい。

 ワインとの相性も最高だ。ワイン自体が対位法的に複雑な香りを持っていて、そこにベカスのこれまた対位法的に複雑な味わいが加わり、両者が一体となって繰り広げられるのはトマス・タリスの40声のアカペラ合唱曲”Spem in alium"のようである。

 元来私はマトンのような、癖があって濃厚な肉が大好きなのだが、ベカスを食べて、世の中にはこれほどうまい肉があったのか、と、本当に感動した。

 濃厚すぎる肉は友人はあまり得意ではないので、代わりにお店の一押しの仔鴨を注文。
 こちらも少しずつ交換して味わった。
 新潟でコシヒカリをついばんで育ったというその仔鴨は、皮と肉の間に志望がほとんどついておらず、肉のぷりぷり感、自然な甘みが大変豊かで、とてもおいしかった。

 友人のほうも、本来強すぎる肉は苦手なところ、シェフの技法の粋を凝らした調理とワインとの相性のよさがあいまって、おいしく堪能したようであった。

 夢のようなメインディっシュを平らげたあと、ワインが余ったので、チーズを注文する。
 これまたソムリエさんのお勧めに従い、ロックフォールをチョイスする。やはり複雑な香りのワインには、複雑な香りのチーズがよいようだ。

 デザートは、マール酒をたっぷり使った冷製スフレを選んだ。濃厚な料理のあとのデザートには、やはりこのくらいの濃厚さがふさわしい。かなりアルコールが効いており、更なる酔いへと私を導いた(笑)。

 エスプレッソで酔いを醒まし、上機嫌で店を後にする。
 うまかった。本当にうまかった。

 来年はぜひ、ジビエの王、リエーヴル(野うさぎ)にチャレンジしてみたい。

ちなみに、調理される前のベカスはこんな感じである。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A4%E3%83%9E%E3%82%B7%E3%82%AE
スポンサーサイト

コメント

変だ。本当に変だ。

平井にフランス料理屋があるなんて・・・
大井町のソープランド並みに場違いな感が・・・
風水の本を逆さから読まない限りこの立地はあり得ないです(笑)
でもこういう店に限って安くて旨いんですよね、東京って。
きっと大井町も・・・

  • 2007/01/23(火) 12:29:12 |
  • URL |
  • Miles的・・・ #-
  • [ 編集]

フフフ。
本当に、安くて(といってもなかなかのお値段でしたが)おいしかったですよ。
場所代は少ないに越したことなし、ということでしょうね。

  • 2007/01/23(火) 20:56:10 |
  • URL |
  • Tiberius Felix #-
  • [ 編集]

よかったですね。まだ私も「山シギ」は食べたことがありません!

  • 2007/01/26(金) 19:26:41 |
  • URL |
  • gramophon #mQop/nM.
  • [ 編集]

>gramophonさん

ありがとうございます。
山しぎは、ぜひとも経験する価値のある食材だと思います。
プロフェッショナルのgramophonnさんなら、きっとお気に召すと思います。

  • 2007/01/26(金) 23:11:25 |
  • URL |
  • Tiberius Felix #-
  • [ 編集]

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://tiberiifelicis.blog10.fc2.com/tb.php/276-d70667cc
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。