趣味の迷宮 ~LABYRINTHVS AD PARNASSVM~

作者Tiberius Felixの迷宮的な趣味に関する雑記帳。 主に音楽、映画、読書、語学、グルメなどの感想・論評を中心に、興味の赴くまま無秩序に迷宮的に書き綴っていくつもりです。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

みかわ、あるいは世紀を超えた憧れ

 あれは確かに前世紀の終わり頃のことだった。

 愛聴するラジオ番組、AVANTIに、日本有数のてんぷら職人と名高い早乙女氏が出演し、てんぷらの話をされていた。

 そのときを皮切りに、早乙女氏の店「みかわ」のてんぷらがいかにすばらしいか、という話をあちこちで耳にするようになり、いつの日にか必ず、みかわのてんぷらを味わいたい、という憧れを胸に抱いてきたのであった。

 その世紀を超えた憧れを、今日、ついに実現させてきた。
 
 当初一緒に行くはずだった友人は仕事の都合で今回は見送ることになり(可哀想に!)、急遽割り勘で(なにぶんお安くはないもので;苦笑)この話に乗ってくれそうな友人に携帯のアドレス帳でアイウエオ順に片っ端から連絡し、マ行の後半でようやく見つかるという紆余曲折を経て、ついに実現したのである。

 お通しのもずくをつるりと味わった後、いよいよてんぷらが始まる。

 トップバッターは、みかわといえばこれ、と、必ず最初の賞賛にあがるえび。
 半生でぷりぷり、しっとりとした舌触り、軽やかな衣。
 芸術的職人芸と名高い、この作品は、話に聞いたとおりの美味。冷やしすぎない、ちょうどよい冷たさのビールがまたてんぷらにぴったりである。

 つづいて、通のメニューとして知られるえびの頭、「クモ」。さくさく、カリカリの歯ざわりに、中身の濃厚なコク。ビールが進む。

 ここでビールは役目を終えて冷酒に選手交代。

 続いて旬の白身魚が並ぶ。墨イカはしゃっきりとした肉質が歯切れよく、キスはふわふわほろほろの身にたっぷりとした甘みを蓄え、メゴチはもっちりした肌理細やかな食感と力強い旨味感。白子のねっとりとろとろの濃厚なコクを堪能した後は、旬の白魚をホロホロ、ホクホクと堪能し、名物の大きなアナゴをさっくりと味わった次に、アスパラのしゃっきりした歯ごたえにジューシーな甘み、しいたけの豊かな味わいが続く。
 
 早乙女氏の作品は時間芸術そのものであり、一品一品のてんぷらを秒単位未満の世界で時間を見切り、つくりあげる。味わうほうも、その時間芸術を、みずみずしい芸術性の一瞬の燃焼を捕らえて味わいつくすのである。

 最後に、貝柱のかき揚げの天茶で締め。あっさりとしたダシが、貝柱の 引き締まった味わいと互いを高めあい、グランドフィナーレにふさわしい作品となっている。

 美味かった。
 本当に美味かった。

 フルトヴェングラーやコルトレーンの生演奏を聴くことの出来る時代には生まれることが出来なかったが、私は早乙女氏のてんぷらを食べることの出来る時代に生まれたのだ。幸せな時代、というに十分ふさわしいことだと私は実感している。
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://tiberiifelicis.blog10.fc2.com/tb.php/291-6c3f62d1
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。