趣味の迷宮 ~LABYRINTHVS AD PARNASSVM~

作者Tiberius Felixの迷宮的な趣味に関する雑記帳。 主に音楽、映画、読書、語学、グルメなどの感想・論評を中心に、興味の赴くまま無秩序に迷宮的に書き綴っていくつもりです。

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組曲「ウラニア」より終曲、「パッサカリア」(J.C.F.フィッシャー作曲) ~「同曲異演という麻薬」その1

J.C.F.フィッシャーはドイツで活躍した後期バロック時代の作曲家で、バッハよりひと世代くらい上の作曲である。

で、このひとの「パッサカリア」であるが、これはご多聞に漏れずオスティナート・バッソによる変奏曲の形式によっている。

 この曲はチェンバロまたはオルガンのための作品で、夢の中を果てしなくさまよい続けるような幻想的な雰囲気にあふれた、非常に独特の曲である。

 出だしはまるでため息をつくような低音のトリルに始まり、とつとつと語るようなメロディが続く。やがて音域が徐々に上がっていき、語り口が熱を帯びてくる。そしてメロディが落ち着きを取り戻すと、今度は幻想の度を増し、果てしない迷宮をさまようかのような長い長いひたすら続くトリルが繰り広げられる。そしてふと意識を取り戻したようにメロディが前に進み始め、やがて名残を惜しむように終わっていくのである。

 私が最初に出会った演奏は、トレヴァー・ピノックというチェンバリストがアルヒーフというレーベルで、バロック名曲集のアルバムにこのパッサカリアだけを録音したもので、初めて聴いたときこの曲の唯一無二の不思議な魅力に圧倒されたのを良く覚えている。
 そのCDの解説書にこの曲は「音楽のパルナッスス」という作品集の中の「ウラニア」という組曲の終曲である、ということがかかれており、私はぜひウラニアを全曲、そして音楽のパルナッススを全曲聴きたいと思うようになり、CDを探し始めた。残念ながら、当時日本で入手できる全曲録音は、音楽のパルナッススはおろかウラニアすらなく、ひたすら新録音を待つ日々が続いたのだが、探し始めてから半年がたった頃、ようやくウラニア全曲を収録したアルバムが出た。ランペというチェンバリストがヴァージンレーベルに録音した盤である。
 ピノックの演奏は、やさしげで甘い夢を描き出しているようであったのだが、ランペの演奏は非常に切れ味鋭く、果てしない迷宮の一種独特な神秘性がはっきり現れた演奏であった。
 ようやくウラニアの全体像にふれることのできた私はその魅力にすっかり魅了され、音楽のパルナッスス全体に対する渇望が強まっていった。そしてようやくその渇望を癒す盤が現れた。ボーセジュールというチェンバリストが全曲を録音した盤である。しかしながら、ボーセジュールの演奏は私の感覚にはあまり訴えてこず、さらなる演奏を求めてやまなかった。
 そして待つこと二年半、何と、私が音楽のパルナッススを探し始めたとき、日本では手に入らなかった録音が日本に入ってくるという奇跡が起こった。この演奏はきわめて心に訴えかけるしみじみとした素晴らしい演奏で、音の動きがそのまま心をかき混ぜてくれるような演奏であった。のモスというドイツのレーベルにガイストという演奏家が録音した盤である。

 このほかにも、私はこの曲の録音を見つけるたびに買い集め、今ではコレクションは10種類に及んでいる。そしてこれからも、この曲が出るたびに買い続けるであろう。

 同曲異演は、やはり麻薬なのである。
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