趣味の迷宮 ~LABYRINTHVS AD PARNASSVM~

作者Tiberius Felixの迷宮的な趣味に関する雑記帳。 主に音楽、映画、読書、語学、グルメなどの感想・論評を中心に、興味の赴くまま無秩序に迷宮的に書き綴っていくつもりです。

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続・秩序からカオスへ~迷宮的旅行記第5章(9)

 ローマ経由でパレルモへ飛び、シチリアの地に降り立つ。

 オーストリアとは打って変わって、こちらはいかにも南国的な雰囲気だ。空の青さが違う。光の強さが違う。そして空気の湿度も高い(苦笑)。

 空港から市内へのバスに乗った段階ですでに、ああ、南イタリアへ来たな、と実感した。
 乗客は自由きままに運転手にあそこで下してくれ、と要求し、運転手も気軽に応じる。ちょっと通行が妨げられると、容赦なくクラクションを鳴らすのだが、ドライバーが女性だと優しく道を譲る。

 そして相変わらず、車道はカオスそのもの。ナポリで実感したのと同じく、車線はぐちゃぐちゃでサーキットのように団子状に車が走る。車間距離は、当然数十センチ。

 しかし、このカオスっぷりこそが、南イタリアならではの何とも言えない活気、力強さを醸し出している要素の重要な一つなのだ。

 バスは終点に着いた。徒歩でホテルへ向かう。道を渡るときは、当然、道を渡るイタリア人を探す(笑)。南イタリア観光の基本中の基本だ。

 荷物を部屋に置くと、まず私は、レパントの海戦を描いたレリーフで飾られているというサンタ・チータ礼拝堂を訪ねようとした。ガイドブックによれば2時に閉まってしまうというので大急ぎでたどり着き、1時50分に滑り込みセーフで中に入る……はずだった。

 しかし、あろうことか公開時間が変更されており、閉まる時間が1時間早く1時になってしまっていたのだった(泣)。

 ……うーむ、これはまた来て見に行くしかない。

 とりあえず気を取り直して、今度は名高いノルマン王宮のパラティーナ礼拝堂へ向かった。

 シチリアはいろいろと魅力の多い島であるが、今回は日程の制約もあったので、行き先をパレルモとアグリジェンドに絞った。

 パレルモはモザイク建築の素晴らしい教会が有名で、特にパレルモからバスで30分ほどのところにあるモンレアーレ大聖堂と、パレルモ中心地のノルマン王宮のパラティーナ礼拝堂は特に名高い。

 バスに揺られること約10分、ノルマン王宮に到着。
 期待に胸をふくらませて礼拝堂を訪ねると……

 なんと、あろうことか改修工事中であった(号泣)。

 この礼拝堂は天井から壁から、すべてがモザイクに覆われた、天国的な色彩感で名高いのであるが、悲しいかな修復拘置中の天井と両脇の壁は金属の足場と白い布で覆われ、申し訳程度の写真パネルが置かれているのだった。

 ……直ったらまた見に来るしかないな、これは。

 悲しみに打ちひしがれながらもノルマン王宮内部の見学を続けると、ルッジェーロ2世の寝室の素晴らしいモザイクを堪能することができ、まぁとりあえずはこれでよしとしよう、という程度には満足できたのであった。

 さて、今度はバスを乗り換えてモンレアーレ大聖堂へ向かう。

 モンレアーレ大聖堂は、塩野七生氏の若書きのエッセイ「イタリアからの手紙」に収録された「シチリア」と題する一遍に絶賛されている。

 氏は、イタリアのお気に入りの教会として、ヴェネツィア、フィレンツェ、ローマの教会をひとつづつ挙げたのち、シラクサの大聖堂の魅力を述べ、最後にモンレアーレの大聖堂を次のように絶賛している。

 (引用開始)

 「モンレアーレのカテドラーレは、私の趣味と一致するどころの話ではない。私の想像力をはるかに超えた、色彩の共演である。」

 (中略)

 「これが、地上の天国というものだ、と私は思った。かつてのキリスト教とは、この中にひざまずき、色彩の饗宴にひたり、両手を広げた正面のキリストの前で、それこそ地上の天国にいる心地がしたことであろう。」

 (引用終了)


 このエッセイを読んでいたので、シチリアに行くならモンレアーレは絶対外せない、と意気込んでいたのだが、本当に行って驚いた。

 そっけない外観の正面玄関から中に入ると、世界が一変する。祭壇に向かって右側の壁には旧約聖書の天地創造物語がモザイクで描かれ、向って左側の壁には新約聖書のキリストの物語が描かれている。
 正面の祭壇には、両手を広げたキリストが信者に救いの手を差し伸べ、その周りを諸聖人と天使たちが取り囲んでいる。下の写真は不鮮明で、本物の魅力の0.1%も伝えられていないが、正面の祭壇のモザイクである。

20070716013043.jpg



 このような空間に、荘厳華麗で神秘的な中世のポリフォニーミサ曲が響き渡り、ラテン語で恭しくミサが挙行されていたら、どんなにか説得力があることだろう。横浜駅から徒歩圏内にこんな教会があったら、私ももっと信心深いキリスト教徒になっていたに違いない。

 この圧倒的に素晴らしい教会建築は私の乏しい信仰心を呼び覚まし、アヴェ・マリアをラテン語で数回唱えて1ユーロ寄付して教会を後にしたのだった。

 モン・レアーレ大聖堂のあまりの素晴らしさに時間を忘れていると、気づいたらもう4時半であった。そこからバスに乗ってパレルモ中心部に戻ってくるともう5時である。シチリアの観光地は閉まるのが早いので、その時間にはもうあいているところはほとんどない。

 というわけで、とりあえず猛烈な暑さと湿度でカラカラに渇いたのどを潤すべく、広場にあったバールへ入る。

 まずは炭酸入りミネラルウォーターでのどの渇きをいやし、今度はシチリア名物のジェラートである。

 じめじめした暑さが体にこたえていたので、自然とフルーツ系のさわやかな味わいを体が求める。カウンターにずらりと並んだものの中から、私はイチゴとレモンを選んだ。

 ここで、通常であればコーンに盛り付けて食べるのだが、シチリアではコーンの代わりにブリオッシュを使うことも多い。この店では客は好きな方を選べるシステムだったので、私はブリオッシュを選んでみた。

 すると、アイスクリームの冷たさとブリオッシュの食感がなかなかに相性が良く、なるほどこれはうまいものだ、と実感した。しかし、ブリオッシュがかなり重く、かなりおなかいっぱいになる(笑)。

 夕食はおいしいものをたっぷり食べたかったので、腹ごなしを兼ねて街を散歩する。ちょうど仕事を終えた人々が街に繰り出し始める時間帯で、昼間から活気あふれていた街はさらに生き生きとし始めてきたところであった。(続く)
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