趣味の迷宮 ~LABYRINTHVS AD PARNASSVM~

作者Tiberius Felixの迷宮的な趣味に関する雑記帳。 主に音楽、映画、読書、語学、グルメなどの感想・論評を中心に、興味の赴くまま無秩序に迷宮的に書き綴っていくつもりです。

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さらばシチリア~迷宮的旅行記第五章(14)

 パレルモに戻ると、前日予約しておいたリストランテに赴く。
 私は、この夕食こそ今回の旅行における美食の最大の期待をかけていた。

 そのために、昼食も軽めに済ませておき、ひたすら歩きまわっておなかをすかせ、ジェラートも我慢して、夕食に備えていた。

 テラス席に案内される。ちょっとフェリーニの映画のワンシーンを思い出すような、賑やかな食卓があちこちに広がっている。雰囲気は抜群だ。

 メニューが運ばれてくる。いろいろと面白いメニューがそろっていたが、熟慮の末、昨日は白ワイン向きの料理だったので今日は赤ワインが飲みたいと考え、メニューを選んだ。

 まず、アンティパストには、シチリア風アンティパストの盛り合わせ。

 ミートボールくらいの小さなアランチー二に、ナスのカポナータ、つぶしたひよこ豆をこねて板状にし、オリーヴオイルで揚げたパンネッリ。オリーヴの塩漬けに、ケッパーたっぷりのアンチョビ。それににんにくの利いた小さなプルスケッタが付いた豪華な一皿である。

 どれもおなじみの地元の味で、いろんな種類がちょこちょこと盛り合わせてあるのが何とも嬉しい。イタリアでこういう盛り付けに出会えるとは思っていなかったので、非常に得した気分になった。

 グラスで注文できる地元のハウスワインは、軽やかな酸味と控えめな渋みで、同じ南イタリアでもプーリアやカラブリアあたりのボディブローのように渋味がドスンと利いてくる赤ワインの趣とはだいぶ異なる味わいであった。むしろトスカーナの傾向に近いかもしれない。

 これがやはり、地元同士の組み合わせで相性抜群。うま味たっぷりのトマトソースにもよく合い、パンネッリやアランチーニのような揚げ物にもぴったりである。

 今日は初めから意気込んでいたので、プリモ・ピアットもスパゲッティ・アッラ・ノルマをしっかり注文。シチリアはシチリアでも、確かもともとはベッリーニの故郷カターニアの料理で、例えるなら大阪で京料理を頼むようなものかもしれないが、そこはまあ同じシチリア内ということで「概ね」本場の味である(笑)。

 スパゲッティ・アッラ・ノルマはリコッタチーズを入れたトマトソースに揚げ茄子を乗せたスパゲッティだが、ここのお店の揚げ茄子がちょっと斬新で面白かった。
 通常、さいの目に切ったり、輪切りにしたりして、揚げ茄子特有のとろりとした食感を楽しむものであるが、ここの揚げ茄子は、あたかもポテトチップスのように薄切りにした茄子をおそらく高温の油で瞬間的にあげているようで、表面のカリカリ、サクサクの歯触りと、その内側のとろり、ぬるりとした舌触りのコントラストが非常に魅力的であった。
 もちろん、シチリアの強烈な太陽の光をたっぷりと浴びて育ったトマトで作ったトマトソースは、酸味はまろやかでうまみがとても豊か。しっかりとしたアル・デンテにゆであげられたスパゲッティも完璧である。ワインの進むこと進むこと。

 セコンド・ピアットは、"Specialite del giorno"としてメニューに挟み込まれていた手書きのカードに書かれていた、マグロのグリル、ミント入りラグーソースを注文。

 ミント入り、と聞いて、一体どんな味がするやら全く想像がつかなかったのだが、私はミントの香りが大好きで、またパレルモの熱帯夜の空気もミントのすっとした香りを求めていたこともあって、迷わずこれを注文した。

 運ばれてきたそれは、さらに私の想像を超えていた。握りこぶし一つ分を優に上回る、大きなマグロの赤身肉の塊が、皿の真ん中にごろん、と鎮座している。皿には、おそらくマグロフレークと赤ワイン入りトマトソースにミントをたっぷり入れたであろう、件のソースが敷き詰めてある。

 ナイフを入れて一口分を切り出し~そう、それはまさに「切り出す」と言う感覚である~、敷き詰められたソースをつけて、口に運ぶ。まず、トマトの香りに、ミントのあのさわやかな香りが口中に広がる。マグロは外側に軽く焦げ目がつく程度にあぶってあり、外側のしっかりした歯ごたえ、中ほどの半生部分の豊かなうまみ、冷たさを残した中心部の刺身のような食感と、同時に様々な味わいを立体的に楽しめる。

 これはうまい。マグロのこんな食べ方があるなんて、目から鱗である。こういう食べ方をするのであれば、やはりトロよりも赤みの方が良いのは間違いない。日本人は肉も魚も脂が好きだが、こういう料理を味わうと赤みの良さがしっかりと理解できることだろう。

 この料理のおいしさは私を大いに感動させ、ワインもお代わりである。

 最後にドルチェにエスプレッソ。
 ドルチェには、チョコレートのタルトを注文した。イタリアらしい、濃厚にチョコレートを練りこんだ生地が非常においしかった。

 シチリアの美食を、一転の不足もなく堪能しつくしたと満足に満ち溢れて、その日は眠りについた。

 翌朝、さすがに前夜の大食いで胃もたれしていたので、朝はカプチーノを一杯飲んで終了。

 腹ごなしを兼ねて、街を歩きながら、まずは金曜に尋ねながらも結婚式中で見学できなかった、モザイクで有名なもう一つの教会、マルトラーナ教会を訪ねる。

 ここは小さな町の教会といったサイズで、モザイクの量は少ないものの、そのサイズの小ささゆえにモザイクとの距離が近く、非常にインティメイトな感覚でとても気に入った。

 来た道を引き返し、考古学博物館へ。
 ここは、地震で崩壊したというセリヌンテの神殿遺跡から、バラバラになった彫刻を集めて復元して展示してあるところで、アルカイック様式のレリーフ彫刻が見られる貴重な博物館である。

20070729171139.jpg



 写真の、ゴルゴーンの首を切るペルセウスの彫像に描かれているゴルゴーンなど、どこかオリエント的な感じがするではないか。はるか古のギリシアのイメージが、ちょっと変わったような気がした。

 一通り館内を見学した後、館内併設のバールへ水分補給に向かう。レモンがたくさん置いてあったので、それですぷれむーたを作ってもらった。

 しぼりたてのレモンジュースを、炭酸入りのミネラルウォーターで割ってもらう。砂糖は入れない。

 ミネラルウォーターはかなり多めに入れてもらったが、レモンの酸味は強烈だった。しかし、酸味の背後に控えるほのかな甘みも感じられ、なかなかおいしかった。

 そのあとは、市立美術館へ。入口が非常にわかりにくく、15分は周囲をうろうろしていたのだが、ようやく入口を見つけて中へ入る。

 この博物館の名物は「死の勝利」と題された大迫力のモザイク画である。骸骨の騎士が死の矢を射かけ、人々がばたばたと死んでゆく。おそらくは中世のペストの流行を現した絵であろう。その大きさ、ち密さ、リアルさ、そして大胆な構図は非常に迫力があった。

 最後に、パレルモで一番の老舗ジェラテリアで、「コッパ・レアーレ」(アーモンド粉を焼いてチョコレートコーティングし、砕いたアーモンドをちりばめた食べられる皿)に山盛りのジェラートが味わえる。

 レモン、ミント、イチゴ、チョコの4種類を、月見団子のように盛り合わせて味わったが、さすが老舗の手作りは美味極まりない。本当においしいジェラートであった。

 これだけで、非常におなかいっぱいになるので昼食はこれで十分(苦笑)。これでパレルモに思い残すことは~工事中のパラティーナ礼拝堂を除いて~なくなったので、一路空港へ向かい、シチリアを後にしてフランスへ向かう。

 シチリアは、魅力の島であった。わずか3日ではとても足りない。次は1週間ほどかけて、シラクサやメッシーナ、カターニアあたりを回りたいと思う。パレルモの工事が終わったころに(笑)
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コメント

ほんとシチリア3日じゃ少なそうですね!

アンティパスト盛り合わせ~スパゲッティ・アッラ・ノルマ~マグロのグリル、ミント入りラグーソース~ドルチェ、エスプレッソまで、拝読して「口福」のお裾分けしていただきました。いや、ほんと美味しそう。。。

  • 2007/07/29(日) 23:18:35 |
  • URL |
  • なつ #3ItBdoaY
  • [ 編集]

>なつさん

 この一晩の食事は、本当に素晴らしかったです。一生忘れられない食事の一つですね。

 シチリアは広くて、ほぼトスカーナ全域を超えるほどの広さです。やはり、シチリアをじっくり楽しむなら、一週間は欲しいところですね。

  • 2007/07/30(月) 00:35:09 |
  • URL |
  • Tiberius Felix #-
  • [ 編集]

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白がたくさんあります

某da◯cy◯に掲載されていたので買いました。辛口でとってもおいしい白ワインでした。・シチリアの白はトロピカル・【新規登録:白】シチリア州 マウリージ・【新規登録:白】シチリア州 プラネタ アラストロ・【新規登録:白】シチリア州 トーラ カタラット ネロ・ダ

  • 2007/08/01(水) 15:47:18 |
  • シチリアをあげる

白のレビュー

ほんとに、香りのよいワインです。安すぎかな?きりっと軽やかなワインなので、ランチのシーフードパスタなどに合わせるとぴったりかと思います。個人的に大ブレイク中のインソリア種のワイン。安っぽいラベルの色とデザインが難点。・宮崎人気に続け!各地アンテナショップ

  • 2007/08/11(土) 16:43:28 |
  • シチリアをあげる

白のレス

00、01と飲んで美味しかったので04も楽しみ。カプライが作るボルドータイプ。かなり期待しています!・宮崎人気に続け!各地アンテナショップの人気を探る・お料理教室~初級イタリアン編 その2~・ワイン調査!!・イタリアワイン試飲会 人気ランキング結果発表!!

  • 2007/08/11(土) 23:27:20 |
  • シチリアをあげる
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