趣味の迷宮 ~LABYRINTHVS AD PARNASSVM~

作者Tiberius Felixの迷宮的な趣味に関する雑記帳。 主に音楽、映画、読書、語学、グルメなどの感想・論評を中心に、興味の赴くまま無秩序に迷宮的に書き綴っていくつもりです。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

コアな一日

昨日は大変にコアな一日であった。

 まず今週はビストロ・ベルランで蓄音機の会が開かれていたので、いつものようにお邪魔したのだが、今回はメンゲルベルクとフルトヴェングラーでチャイコフスキーの「悲愴」を聞き比べるという大変重厚な企画で、これまでチャイコフスキーにあまり親しんでこなかった私には格好の入門企画となった。

 蓄音機の会の後は、横浜で友人のこば氏と落ち合い、飯を食いながら用事を済ませた後、例のごとく音楽談義になったのだが、いつの間にか調律法の話題になっていた。調律法といえば古楽マニアの私にとっては、避けては通れぬ話である。そうこうするうち、じゃあ実際に音で聴き比べよう、ということになり、私の家へと向かった。

 大まかに言うと、調律法はまず純正率というものがあり、これはあるひとつの音を主音に定め、そこから周波数が整数比と鳴る音を積み重ねて音階を作っていく方法である。これは最も古くからある(一説によればあのピタゴラスの定理で中学生だった私を散々苦しめた(苦笑)ピタゴラスが発見したといわれている)調律法で、和音を美しく響かせるためには最適の方法である。
 
 で、まずは純正律を、ということで、ハーモニーの原点、中世の教会音楽から私の知る限り録音されている現存する最古の多声合唱作品、ぺロティヌス・マグヌスの「Viderunt omnes」を聴く。(余談だが、ラテン語名でペロティヌス・マグヌスというといかにも偉大な作曲家という感じがするが、フランス語読みにペロタン・マーニュというとなんだか子犬の名前みたいになるような気がする。ひらがなで書いたらなおさらだ。ぺろたん・まーにゅ(笑))。

 これは12世紀にパリのノートルダム教会でクリスマスのミサのために歌われていた作品で、純正律の合唱が正確な整数比で響和音を作り出すのが端的に判る作品である。

 しかしこの方法では、主音を別の音に変えたときー即ち転調を行ったときー、転調前の整数比の関係が崩れるため、不協和音だらけの音程になってしまう。そのためまた一から音階を作り直さねばならないことになってしまう。 
 そうなると、声楽やヴァイオリン、トロンボーンなど、演奏者が無段階に音程をコントロールできる楽器ならばそのつど微調整できるので特に問題はないのだが、鍵盤楽器のように段階的にしか音程を作れない楽器の場合、転調のたびに調律をやり直さねばならなくなってしまうのである。
 それゆえ声楽では転調もありえたが、オルガン曲では原則として転調なしで曲が作られていたのである。

 で、鍵盤楽器を純正律に調律してしまうとどうなるかということで、現存する最古のオルガンのひとつといわれる1490年頃製作されたイタリアの教会のパイプオルガンで録音された、カヴァッツォーニという初期ルネッサンスの作曲家の作品を聴く。美しい和音でしみじみと聞かせてくれる佳品だが、やはり転調は敢えて不協和音を使ってテンションをかける場合を除いてほとんど出てこない。

 しかし、転調なしでの作曲も次第にネタが尽きてきたのか、作曲家たちは鍵盤音楽でも転調を取り入れようと試行錯誤を積み重ねた。そうして現れれたのが、周波数の比率を調性し、あまり使われない調の主和音を犠牲にして、ある程度の調律のやり直しをせずに一定範囲の転調を可能にする方法である。

 ヨーロッパ各国でさまざまな調律法が工夫されており、それをいろいろ聞き比べてみる。今回は、イタリアからフレスコバルディ、 イギリスからギボンズ、ドイツからバッハ、フランスからラモーを選び、それぞれに適した調律法で演奏されたCDを聴き比べてみた。
 
 そしてさらに時代を下り、モーツアルト、ベートーヴェン、ショパン、ドビュッシーと来て現在の等分平均律にたどり着くわけである。実際、それぞれをそれぞれの調律で聴いていくと、やはり時代を下るにつれて転調のパレットが広がる一方、あまり協和音を強調しない作曲法に変遷していくのがわかる。

 最後には不等分調律による古楽器での演奏と平均律によるモダンピアノでの演奏とを同曲異演で聴いてみる。バッハのゴルトベルクをスコット・ロスのチェンバロとグレン・グルドのモダンピアノで。そしてベートーヴェンのソナタ30番をスコダのフォルテピアノとアファナシエフのモダンピアノで。

 で、絶対音感の持ち主のこば氏の感想はというと……

 「なんかでこぼこしてますね。」
 「絶対音感があるとドレミファソラシドのどれでもない音に聴こえてちょっと気持ち悪いですね。」
 「まあ、好き好きですね。」

 …やはり改めて趣味の世界は迷宮である(笑)
スポンサーサイト

コメント

勉強になりました。

また、宝の山を聴き漁りに行きます。(笑)
 答練大丈夫でした?
答練の時間を言ってもらえば、もっと早く寝るようにしましたのに。すんませんでした。m(_ _)m

  • 2005/09/10(土) 00:30:08 |
  • URL |
  • こば #-
  • [ 編集]

ええ、大丈夫でした

答練は、コーヒーのおかげで無事乗り切れました。
またぜひ。。

  • 2005/09/10(土) 23:58:02 |
  • URL |
  • Tiberius Felix #-
  • [ 編集]

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://tiberiifelicis.blog10.fc2.com/tb.php/35-628befd1
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。