趣味の迷宮 ~LABYRINTHVS AD PARNASSVM~

作者Tiberius Felixの迷宮的な趣味に関する雑記帳。 主に音楽、映画、読書、語学、グルメなどの感想・論評を中心に、興味の赴くまま無秩序に迷宮的に書き綴っていくつもりです。

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戦前~ここに言う「戦」とは……

 gramophonさんご主催の今月の蓄音機の会にお邪魔してきた。

 今回の特集は、ラッパ吹きこみ時代のワーグナーを聴くというもので、何とすべての録音が第一次大戦前の録音(!)である。

 1945年5月7日以前の録音には独特の、現代とはやはり異なる断絶した時代の空気が詰まっているのを感じられると私は思うのだが、1918年11月11日以前の録音には、さらに独特の、「戦前」の現代とは二重に断絶した時代の空気が時空を超えてやってくるような気がする。

 ラッパ吹きこみというと、復刻CDで聴くと玉音放送のエアチェックを倍速ダビングしてMP3に圧縮したものを電話越しに聴いているようなひどい音質のものばかり、というイメージだが、ベルランの素晴らしい蓄音機でアコースティック再生すると、驚くほど豊かな再生音が広がる。

 まず驚くのは、テンポの速さだ。

 録音時間の制約があるため、時間内に収めるために早いテンポで演奏していたこと、回転数が当時は78回転に統一されておらず、もっと遅い回転数かもしれないこと、など、本当はもっと遅かったのかもしれないことを推定させる要素はたくさんあるのだが、ノリントンのアプローチのように、当時のテンポ設定がそもそももっとずっと早かったのだと私は思いたいところである。

 実際、ワーグナーは自分の作品が演奏されるテンポが遅すぎるといつも文句を言っていたらしい(出所不明だが)。
 いずれにしても、5分強の「愛の死」など、ノリントンの録音に本当にそっくりなテンポ設定で、ノリントンのあのアプローチは実際当時の演奏に肉薄しているものなのだ、と私は考える。

 また、歌と言わずオケと言わず、ポルタメントの多用が目立つ。これは当時のスタイルなのだろう。ピリオド・アプローチの演奏で真似してみたら面白かろうに、と思わないでもない。この、ポルタメントを多用する歌唱法は、どことなくのっぺりしたような独特の朗読的な感覚をもたらし、なんとも大時代的と言うか、やはり現在とは断絶の彼方にあるはるかな遠い時代の録音という実感がわいてきて、非常に面白かった。

 ラッパ吹きこみばかりこれだけまとめて聴けるというのは、本当にすごいことだと思う。
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コメント

今回は私も伺う予定だったのですが、別の用事が入り、断念しました。

>ワーグナーは自分の作品が演奏されるテンポが遅すぎるといつも文句を言っていたらしい(出所不明だが)。
確かに第一次大戦前というと、ワーグナーの生きていた時代とまだ隔絶していないわけで、オリジナルの息吹が残っていたことも充分考えられるわけですね。

私は、オープンリールでコレッリのライブを聴かせて頂いたことがあるのですが、あまりの臨場感に仰天しました。
デジタル信奉に陥っていた自分を思い知った次第です。

近いうちに、蓄音機の会にぜひ顔を出そうと思っています。

  • 2007/09/09(日) 02:18:07 |
  • URL |
  • なつ #3ItBdoaY
  • [ 編集]

>なつさん

そうでしたか。
今回はお会いできず残念でしたが、ぜひまた蓄音機の会でお会いしましょう。

アナログの音って、リアリズムを突き詰めたデジタルとはまた別の魅力がありますよね。

ちょうど絵画が、どんなに写実的であろうと、その本質がディフォルメであり、ディフォルメであるがゆえに実物以上にその本質をありありと描き出すのに似ていると思います。

  • 2007/09/09(日) 21:02:06 |
  • URL |
  • Tiberius Felix #-
  • [ 編集]

あれだけまとめてSP盤を提供して下さった室伏さんに感謝してます。まだ、コージマが全権を握っていた頃、マーラーが改宗してやっとウィーン宮廷歌劇場で指揮させてもらった時代なんですよね。
 確かにか細い音や雑音もいっぱいでしたが、心に伝わるものは大きかった!大型蓄音機のよさが際立ちましたね。

  • 2007/09/10(月) 20:35:14 |
  • URL |
  • gramophon #mQop/nM.
  • [ 編集]

 ええ、本当に素晴らしい音に包まれた二時間でした。
 やはり、あの大型蓄音機でのアコースティック再生でしか味わい得ない、あの時代の息遣いがありありと聞こえてくるようでした。
 室伏さんには本当に感謝ですね。

  • 2007/09/11(火) 21:40:18 |
  • URL |
  • Tiberius Felix #-
  • [ 編集]

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