趣味の迷宮 ~LABYRINTHVS AD PARNASSVM~

作者Tiberius Felixの迷宮的な趣味に関する雑記帳。 主に音楽、映画、読書、語学、グルメなどの感想・論評を中心に、興味の赴くまま無秩序に迷宮的に書き綴っていくつもりです。

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世界の中心で叫ぶよりも~東京バッハモーツァルトオーケストラとピート・クイケン鑑賞

 奇跡的な日程調整に成功し、有田正広指揮東京バッハモーツァルトオーケストラのコンサートを鑑賞することができた。

 演目はオールモーツァルトプログラムで、フィガロの結婚序曲で始まり、私の何よりも愛するピアノ協奏曲第21番、交響曲第40番と言う豪華なラインナップである。

 フィガロの結婚序曲は、まあいってみればウォーミングアップのようなものなので、演奏云々は野暮であろう。しかし、スタートから表現意欲を感じさせる演奏であったことは間違いない。

 ピート・クイケンが登場し、待望のピアノ協奏曲が始まる。
 ピート・クイケンはバロック・ヴァイオリンの第一人者シギスヴァルト・クイケンの息子で、古楽界に名演奏家を多数輩出しているクイケン一族の中でも新世代の白眉、一族の秘密兵器と呼ばれているらしい。

 オケの前奏がしばらく続く。
 フィガロ序曲から感じていたことなのだが、有田正広の指揮は、息遣いのこまやかさ、弱音の効果的な使用から生み出される繊細な美しさが非常に特徴的に感じられた。この息遣いの絶妙な感覚は、長年のフラウト・トラヴェルゾの演奏活動の中からおのずと培われてきたのだろう。弱音表現の絶妙さなど、同じ木管楽器奏者出身のブリュッヘンとの共通性が感じられた。

 ピート・クイケンのフォルテピアノが満を持して入ってくる。
 素晴らしい音色だ。
 フォルテピアノは音色の幅が広く、演奏家が実に様々な色合いの音色を紡ぎだすことができるのだが、オケの繊細さに呼応するように、モデレータまで駆使して紡ぎだされる変幻自在の音色はそれだけで非常に表現力豊かで、言葉少なに多くを語る。
 彼もまた絶妙の弱音表現で非常に繊細な音楽を作り上げてくれている。その繊細さたるや、この、どちらかと言うと豪快なイメージのある21番と言う作品が、全く違った音楽のように聞こえてくるほどだ。
 だが、この繊細さから、この作品、ひいては音楽そのものへの愛情がひしひしと伝わってくるのである。世界の中心で叫ぶよりも、耳元でそっと優しく囁いてくれた方が、愛は伝わるということなのか(笑)。

 時折メカニカルの不安定さが顔をのぞかせる場面も散見されたものの、作品の気付かなかった一面に目を開かせてくれた演奏であった。第三楽章を終えたのち、何度か拍手にこたえると、彼はアンコールにソロでモーツァルトのアダージョを演奏してくれた。これまた、グラスからふわりと立ち上るワインの香りのような、繊細で芳醇な音色で実に豊かな音楽を聞かせてくれた。

 休憩をはさんで、交響曲第40番。
 快速テンポでぐいぐいとドライヴしていくのだが、その心地よいスピード感に乗せつつも自然な呼吸管と繊細な弱音表現の土台が揺るがないのが素晴らしい。もうちょっとコクがほしいと思わないでもないものの、とても充実した演奏であった。

 一生懸命日程調整に挑んだ甲斐があったとつくづく思う、素晴らしいコンサートだった。
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