趣味の迷宮 ~LABYRINTHVS AD PARNASSVM~

作者Tiberius Felixの迷宮的な趣味に関する雑記帳。 主に音楽、映画、読書、語学、グルメなどの感想・論評を中心に、興味の赴くまま無秩序に迷宮的に書き綴っていくつもりです。

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オーケストラ・シンポジオンの第九

 オーケストラ・シンポジオンが第九をやるというので、はるばる西東京は保谷まで聴きに行ってきた。

 正直なところ、合唱団がアマチュア市民合唱団であったので、あまり期待していなかったのだが、なかなかどうして、効きごたえのある演奏であった。

 正直、不満もないではない。

 唖然としてしまったのが、使用楽器のアナクロニズムである。
 2本のフルートのうちの一つが、もろに金属製のモダンフルートだったことである。コンセプト先行の演奏会なので、どうしても古楽奏者がそろわなかったのかもしれない。しかし、「ベートーヴェン時代の響き」と大々的にポスターに謳っておきながら、一言の断りもなく堂々と金属製のフルートで演奏するというのはいかがなものか。ベームが初めて金属製のフルートを世に送り出したのは1847年、ベートーヴェンの死後20年後のことである。同様に、クラリネットも一見するとモダン楽器で、仮に歴史的楽器だとしてもベートーヴェンの時代には遡らない複雑なキーシステムを備えているものであった。
 その一方で、少なくとも第九の初演された時代のウィーンではほとんど見かけることはなかったカストラートに相当する、カウンターテナーをアルトに起用している。記録に残る第九の初演では、耳の聞こえないベートーヴェンに拍手する観客を知らせた女性歌手がアルトを歌っている。

 いうなれば、第二次大戦を舞台にした映画で日本兵がちょんまげを結って迷彩服を着ているような奇妙なアナクロニズムである。

 こんなハチャメチャなことをやっているのだが、演奏自体はなかなか良かった。

 いわゆるピリオドアプローチで、非常にきびきびとした音楽運び、楽譜の隅々まで構造が描き出されるような素材の味を生かした演奏である。少々肩に力が入りすぎている感じを覚えるところや、古楽ピッチに対応しきれていないゆえに音が少々濁るようなところなど、突っ込みどころもあったのだが、全体としては良好な印象である。

 第四楽章など、フルトヴェングラーを彷彿とさせるようなダイナミックな表現をきかせてくれた。
 ”おおむね”古楽器オケ(苦笑)で、しかもピリオドアプローチの枠は維持しながらも、このようなダイナミズムを味わえたというのは、あらゆる欠点を補って余りある価値があるだろう。

 少なくとも、「最近は原油が高いから、わざわざ年末に日本円を稼ぎに行かなくても別に困らねぇしなあ」という感じでルーティンワークとしか言いようのない演奏を淡々とこなしていた、昨年末の某産油国国立劇場オケの第九よりもはるかに素晴らしかったことは言うまでもない。
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