趣味の迷宮 ~LABYRINTHVS AD PARNASSVM~

作者Tiberius Felixの迷宮的な趣味に関する雑記帳。 主に音楽、映画、読書、語学、グルメなどの感想・論評を中心に、興味の赴くまま無秩序に迷宮的に書き綴っていくつもりです。

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プレイエルとエラールでバラードを聴き比べ

”気分がのらない時は、エラールを弾く。そこにはいくらでもお気に入りの音色を見つけだすことができる。でも、最高に気分の乗っているときには、プレイエルのピアノでなければならない。”

 -F.ショパン


 ショパンの時代には、フランスのピアノの二大ブランドと言えばプレイエルにエラールであった。

 ウィーンで作曲家として活動したのち、パリでピアノメーカーを起業して成功したプレイエルのピアノは、ウィーン風の繊細なキータッチの伝承を感じさせる反応の俊敏さと、高音域の透明感、ダイナミックレンジの広さ、輝かしさから荒々しさまで自在のパレットの広さを感じさせる。

 これに対して、ピアノの歴史上きわめて重要な技術的変革であたダブルエスケープメントのキーシステムを発明したエラールのピアノからは、キーコントロールの小回りの利きの良さ、重量感、木質のやわらかな響き、密度の高さと言ったものを感じさせる。

 最近、ポーランドのショパン財団が所蔵のフォルテピアノで一連のショパン作品の録音プロジェクトをリリースしはじめ、ごく最近ようやく日本にも入ってきはじめたのだが、そのシリーズの一つに、1848年(ショパンの没年だ)製のプレイエルによるバラード全集が入っていた。

 私はショパンのバラードが好きで、特に第一番はショパン作品中の白眉と思っているので、早速購入した。

  ネルソン・ゲルナーによるこの演奏は、プレイエルらしい反応の良さと広域の透明感を生かし、抑えるべきところはクールに抑え、強めるべきところでは大変情熱的にダイナミックな演奏を繰り広げている。

 エラールの方では、すでに1995年にエラールからアレクセイ・リュビモフによる録音が出ている。
 こちらの方は、エラールの温かみのある木質の響きをたっぷりと生かし、息の長いフレージングに弱音の繊細さを極限まで引き出した演奏と言え、これも非常に魅力的である。

 物語詩、という、バラードと言う言葉の語源に照らして考えれば、プレイエルを用いたダイナミックな演奏こそ、作品の本質に迫るものと言えるだろう。しかしながら、ショパンと言う音楽家の個性を味わうという意味では、エラールの繊細な演奏が恋しくもなる。

 逆説的だが、気分ののらない時でも自分の思う音色を引き出せるというエラールに対するショパンの評価からすれば、あるいはショパンの個性を引き出すにはエラールに軍配が上がるのかもしれない。

 いずれにしても、ショパン存命中の楽器でバラードの聴き比べを楽しめるようになったというのは、なんとも素晴らしいことである。
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