趣味の迷宮 ~LABYRINTHVS AD PARNASSVM~

作者Tiberius Felixの迷宮的な趣味に関する雑記帳。 主に音楽、映画、読書、語学、グルメなどの感想・論評を中心に、興味の赴くまま無秩序に迷宮的に書き綴っていくつもりです。

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印象一変~迷宮的旅行記第7章(12)

 ミラノから二時間程度の電車の旅を終えて、ヴェネツィア・サンタ・ルチア駅に降り立ち、広場に出た時、私は言い知れぬ感動に包まれた。

 町が、美しいのである。

 西の空が少しずつ茜色に染まり始めるころ合い、東の空は未だ青さを保ち、空を覆う雲は全体の3割にも満たない、この上なく美しい空の色を、運河が鏡のように写し取り、柔らかな黄昏の陽光とその運河からの照り返しに上下から照らされた街並みが金色に輝く……。

 初めて訪れた、カーニヴァルのヴェネツィアは、鉛色の雲に覆われ、全体的にくすんだ重苦しい暗い印象がぬぐえなかった。二度目に訪れた、青空の下のヴェネツィアも、確かに美しかったが、それでもやはり強すぎる光が細かい汚れを目立たせてしまうせいか、どこか物悲しさを感じずにいられなかった。

 それが、夕陽を浴びた町を見て、印象は一変した。
 夕陽のやわらかさは、町の美しさを引き出すに十分な量の輝きを与え、かつ、昼の光が容赦なく照らし出す様々な汚点をうまく覆い隠す、絶妙のバランスだったのだろう。

 大運河を通り抜けるヴァポレットに乗り込み、黄金色、茜色、紫色、紺色と表情を変える空の下を、サン・マルコ広場まで進んでいく。ヴェネツィアが、一日の中で最も美しいわずかな瞬間を、こうしてたっぷりと味わうことができたと言うのは幸運であった。

 サン・マルコ広場でヴァポレットを降り、ホテルへと向かう。プリントアウトしていた地図がおおざっぱ過ぎて、結局曲がり角ごとに道の名前を読んでまだ違う、まだ先だと延々30分くらい探してしまったのだが、こういうとき、すべての道に名前を付けてそれを表示するイタリアの(ヨーロッパではどこでもそうなのかもしれないが)住所表示システムのありがたさを痛感する。これが、住所からでは場所を把握することがまず難しい日本だったら、きっと迷う時間が30分では済まなかったに違いない。

 ただでさえ日本より火が長い上にサマータイムの7月のイタリアで夕日を鑑賞したと言うことは、それだけ遅い時間だったと言うわけで、なんだかんだでチェックインを済ませたのは十時近かった。

 しかし、ミラノから何も食べずに空腹を抱えていたので、意地でも夕食はとろうと言うことになり、とにかく空いているところに飛び込む、ということで、サンマルコ広場から少し奥に入ったところにあったトラットリアに入ってみたのだが、これが大外れであった。
 イカスミスパゲッティや、魚介のグリルなどを頼んだのだが、なにもかも、やたらに塩味ばかりきつくて、素材の味が死んでいる。食えただけまし、ということにして、その日は眠ることにした。(続く)
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