趣味の迷宮 ~LABYRINTHVS AD PARNASSVM~

作者Tiberius Felixの迷宮的な趣味に関する雑記帳。 主に音楽、映画、読書、語学、グルメなどの感想・論評を中心に、興味の赴くまま無秩序に迷宮的に書き綴っていくつもりです。

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続・輝く迷宮~迷宮的旅行記第7章(14)

 くねくねとした細い路地を抜けた先にある、トラットリア・アッラ・マドンナと言う名のその食堂の名物は、伝統的な地元料理である。しかも、旅行者と地元客の比率はおおむね均等らしいので、味の方にもおのずと期待が高まるというもの。

 まずはヴェネツィア名物クモガニのサラダをアンティパストに注文する。
 これは、塩ゆでにした甲羅がちょうどこぶし一つ分くらいの大きさのカニの身をほぐして、甲羅に詰め込み、オリーヴオイルとレモン汁で頂く料理である。カニの身のぷりぷりとした舌触りに、豊かな甘みが、オリーヴオイルの芳香と、しっかりと利かせた塩味に包まれ、レモン汁の酸味がアクセントとなって、非常に美味である。まさに素材の味を生かした調理法と言えるだろう。

 ワインは、フリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州の外側にはなかなか出回らない、トカイ(ハンガリーの有名な貴腐ワインとは別物の、辛口の白ワイン)を見つけたのでこれを合わせた。白ワインらしいさわやかさに、しっかり目の余韻が残るその味わいは、クモガニとの相性も抜群。

 プリモに、私はズッパ・ディ・ペッシェ(魚介のスープ)を、母は貝類のトマトソーススパゲッティを注文した。

 長年、なぜプリモがパスタとスープの選択制なのかずっと疑問だったのだが、ズッパ・ディ・ペッシェが供された時、その疑問は解決した。

 スープとともに、大量の揚げパンが出てきて、その揚げパンをスープに浸しながら味わうのである。
 なるほど、これはプリモである(笑)。

 ズッパ・ディ・ペッシェは、エビ、カニ、ムール貝、あさり、スズキを凝縮したような、味の濃い白身魚などを煮込んだだしが複雑にして玄妙なうまみを味わわせてくれ、これには心の底から満足であった。このスープをたっぷりと吸いこんだ揚げパンがまた、食感と言い、味わいと言い、絶妙至極である。ワインの進むこと!

 途中、母のスパゲッティと交換。これがまた、トマトのうまみと貝類のうまみが見事に溶け合い、素晴らしい味わいであった。

 セコンドは、胃袋のキャパシティから、一皿を二人で分けることとした。
 頼んだのは、イカのイカスミ煮込みである。
 いかすみは、捕食者に襲われたいかが味の良い墨を吐き出して、それを口にした捕食者が一瞬いかを食べたものと錯覚した時に逃げ出すという防御手段なのだそうで、ゆえにイカそのものに匹敵するうまみを持っているのであるが、やわらかく煮込まれたイカの肉に良くしみこんだいかすみの味わいがまろやかで、心地よい。

 サンペレグリーノを飲み飲み味わったワインも飲みつくしたところで、ちょうど食べ終え、ドルチェのワゴンを持ってきてもらう。どのドルチェも魅力的であったのだが、その中でも一段上の輝きを感じたレモンタルトを注文。母も同様であった。親子の味覚趣味は似るようだ。

 実際、レモンタルトは素朴な味わいながらとても美味しかった。

 最後にエスプレッソで締めて、今回のイタリア旅行で最後のきちんとした食事となる午餐を終えたのである。

 食後、ゆっくりと街並みを愛でながら、再びリアルト橋を越え、サン・マルコ広場へ戻り、サン・マルコ寺院へ。素晴らしいモザイクやスクリーンなどを鑑賞しつつ、境内を歩いていると、黎明期のヴェネツィア共和国がビザンツ帝国の属国であったことが実感をもって感じられた。

 最後に、パラッツォ・デュカーレをのんびりと見学し、往時の共和国の栄耀栄華に思いをはせる。
 ……しかし、やはりここに来ると、兵どもが夢のあと、と、滅びた存在の物悲しさを感じずにいられない。

 パラッツォ・デュカーレを後にして、ヴァポレットで大運河をさかのぼり、ローマ広場からマルコ・ポーロ空港へ。最後に、お土産に免税店でアマローネを一本、小さなグラッパを一瓶購入して、再びパリ経由で成田へと帰国したのであった。(完)
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