オッソ・ブーコというのはミラノの名物料理で、仔牛のすね肉を輪切りにして、玉ねぎ・トマト・白ワインで煮込んだ料理である。
イタリア語でオッソ(osso)は「骨」、ブーコ(buco)は「穴のあいた」という意味ですので、直訳すれば「穴空きの骨」となるが、これは、輪切りのすねの骨の骨髄をとろとろに煮あげて味わうと、あとには穴のあいた骨が残る、ということから名付けられている。2番目の写真をごらんになればよくご理解いただけよう。
私は、時間さえかければ素人でもおいしく作れる肉の煮込み料理がすごく好きなので、オッソ・ブーコもほんの軽いノリで、本格イタリアンっぽい肉の煮込み料理という安直な考えでやろうと思い立ったのだが、まず最初にぶち当たったのが食材調達であった。
何しろ、普通のスーパーで売っているのはあり得ない(笑)
それでもこれだけ有名な食材なのだから、と、専門性のありそうなお店をあたってみた。デパ地下を回り、元町ユニオンをあたり、肉のハナマサまで足を延ばして、全滅(涙)。
結局、ネット通販で検索を重ねて、ようやく冷凍物を入手できた。
つぎの関門は、肉の解凍であった。
肉と一緒に送られてきたマニュアルによると、冷凍肉をおいしく解凍するには、発泡スチロールに氷水を張り、その中に真空パックされた冷凍肉を付け込んで、ゆっくりじわじわと解凍しなければならないのだそうだ。
そう言われると、忠実にそうせずにいられないのが私の性格(苦笑)。肉の大きさのサイズをメモして、東急ハンズに発泡スチロールの箱を買いに行くことから始める。
氷水を張って解凍を始めたのだが……一向にとけない(死)。
午前中から解凍を始めて、ようやく肉がとけたのは午後7時。
マニュアルには、真空パックをポリ袋にくるんで空気を抜き、氷水に浸すべし、と書いてあったのだが、あまりの解凍の遅さに業を煮やし、途中で真空パックを直接氷水に浸しなおしているで、ある意味インチキなのかもしれないが、それでも7時間。……次にやる時は前の晩からやっておく必要がありそうだ。
5時少し前に、下ごしらえ作業に取り掛かった。フライパンにオリーヴオイル少量とバターを溶かし、つぶしたにんにくの香りを弱火でじっくりと引き出して、みじん切りの玉ねぎを全体がきつね色になるまでじっくり炒める。
玉ねぎに火が通ったところで、煮込み用の鍋に移し、いったんフライパンをきれいにする。ここでようやく肉がとけてきたので、肉の下ごしらえに入る。まず全体に塩こしょうして下味をつけ、少し寝かせて味が染みるのを待ち、塩分がしみこんだころ合いで肉に小麦粉をふるい、同じく溶かしバターとオリーヴオイルを熱したフライパンで表面を焼き固め、肉汁を閉じ込める。
全体に焼き色がついたら、白ワインを注ぎ込んでフライパンの底にこびりついた肉のうまみを溶かしだし、ひと煮立ちさせてアルコール分を飛ばして玉ねぎの鍋に投入。
肉が浸るくらいに水を足して、種を取ってざく切りにしたトマト一個分を加え、あとはひたすら弱火でことこと煮込みである。
仔牛はもともと柔らかく、火の通りも早いので、煮込み時間は二時間弱で十分。火を止める数分前に、香りづけのグレモラータ(パセリ、レモンの皮、にんにくをみじん切りにして混ぜ合わせたもの)を投入し、全体に香りがついたら完成。
とろとろに煮えた骨髄のコクに、やわらかく繊細な仔牛の正肉の味わい、そしてレモンとパセリのさわやかな香りが絶妙のバランス感で、大変おいしく煮あがった。
ワインは、本当ならミラノの属するロンバルディア州のワインを合わせたかったのですが、ロンバルディアワインが手に入らなかったので、比較的手に入れやすい隣のピエモンテ州のワインを合わせる。
ピエモンテワインならバローロかバルバレスコと行きたいところだが、そこは予算の関係で(笑)、同じピエミンテ州のランゲ・ロッソ・インカントなるワインを購入。これがなかなか鋭い味わいで、オッソ・ブーコの濃厚極まりないうまみとがっぷり四つに組んで重厚な味覚世界を作り出している。
何のかんのと、面倒なことはたくさんあるのだが、それでも調整のし甲斐がある料理だと思う。


