趣味の迷宮 ~LABYRINTHVS AD PARNASSVM~

作者Tiberius Felixの迷宮的な趣味に関する雑記帳。 主に音楽、映画、読書、語学、グルメなどの感想・論評を中心に、興味の赴くまま無秩序に迷宮的に書き綴っていくつもりです。

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真の同時代楽器演奏~ニケ指揮コンセール・スピリチュエルのヘンデル

 いわゆる古楽器としてバロック音楽の演奏に用いられているホルンやトランペットは、実はもっと後の時代、古典派初期の構造と演奏法にのっとっている場合がほとんどなのだそうである。すなわち、ホルンの朝顔に拳骨を突っ込み、「ゲシュトップフト」によって音程をコントロールするとか、ナチュラルトランペットの管体に小さな指穴をあけ、指穴のコントロールで音程を調整するとか、そういった現代の古楽器演奏家が広く採用している演奏方法は、1750年代以降に確立された技法なのだとか。

 というのも、現代の調律、ハーモニーに慣れてしまった現代の聴衆の耳には、すなわち、本当に一本の管をねじって作ったホルン、トランペットの、本当の自然倍音だけでの演奏では、音階の「近似値」の音しか出ず、現代の聴衆の耳には一種異様なギシギシとした印象を与えるからなのだそうである。

 これにはもしかしたら、バロック末期に従来の伝統的な教会旋法の影響を完全に脱した調性論が確立され、それに対応した調律法が広まり、古典派の時代には音楽の主流が調性音楽にシフトしたことと関係するかもしれない。教会旋法ならば自然倍音だけで対応できても、調性音楽を吹こうとすると自然倍音が調性の求める音程とずれてしまうことはありえよう。

 ところが、この状況に異議を唱えたのが、フランスの指揮者エルヴェ・ニケである。
 彼は、「本当にバロック時代に行われたいた通りの習慣」を追求するため、そうした古典派以降の時代にできた「新しい(!)」技術要素を排除して、ヘンデルの「水上の音楽」「王宮の花火の音楽」を録音し、クラシック界ではヒットとなったのである。

 私も録音を通じて、その仕事の素晴らしさに強い印象を受けていたのだが、今回ついにそうした楽器を携えたオーケストラを率いてニケが来日し、日本公演を行ってくれたのである。

 実演は録音とは比較にならぬほど効果的であった。
 水上の音楽では、ホルンやトランペットの金管の鋭い音色と、オーボエやフルートの木簡の柔らかい音色とを鮮やかに対比させる場面がよく出てくるのだが、ここで表現されるべきコントラストが、非常に効果的にあらわれてくるのである。

 古典派式の、ゲシュトプッフトした音色は、非常に柔らか、まろやかであるが、まさに「角笛」というべき音色のホルンはぎしぎしと鋭く響き、それを木管の柔らかな音色が受け止めることによって、両者の対比が一層鮮やかに引き立つのである。

 トランペットの輝かしさも、やはり違う。これがまた、ホルンのびりびりした音色と効果的に対比される。

 はるばる名古屋まで聴きに行った甲斐のある、素晴らしい演奏であった。

 
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