趣味の迷宮 ~LABYRINTHVS AD PARNASSVM~

作者Tiberius Felixの迷宮的な趣味に関する雑記帳。 主に音楽、映画、読書、語学、グルメなどの感想・論評を中心に、興味の赴くまま無秩序に迷宮的に書き綴っていくつもりです。

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「ローマ亡き後の地中海世界 上」

 「ローマ人の物語」完結から二年、塩野七生氏の新作が世に出た。

 「ローマ亡き後の地中海世界」の、上巻である。

 幸か不幸か、この本を買ってすぐ熱に倒れたので、病床の楽しみにこの本を読むことができたのであるが、熱の苦しみを和らげてくれる、実に知的刺激に満ちた作品であった。

 パクス・ロマーナの崩壊後、地中海はサラセン人の「海賊」の跋扈する恐怖の海と化した―本作品は、そうした「海賊」とキリスト教世界の住人との戦いを軸に、「われらが海」が如何に変質してしまったかを描き出したものである。

 まず、戦いとその進展を描かせたら右に出るもののない塩野氏の筆は今回もさえており、ぐいぐいと引きつけられる。そして何よりも印象的だったのは、「多極化」のいかなるものかということが、これでもかと描かれていることである。

 ローマ帝国が機能し、パクス・ロマーナが維持されていた時代には、帝国じゅうを張り巡らせた海道網を駆使して、軍団兵が帝国の住民を守っていた。しかし、ローマ帝国が崩壊し、「多極化」した世界では、住民の「敵」はそのまま残る否、増える一方で、住民を守ってくれるものは「いなくなった」のである。

 東ローマの皇帝も軍隊を送ってくれない。皇帝の代官も何もしてくれない。地元の領主も何もしてくれない。それでいて、税金だけは取る。これが、「多極化」の実態であった。

 非常に示唆に富んだ事実である。
 日本には、一部で米国経済の崩壊をあたかも敵の破滅のように喜ぶ風潮が見られるが、仮に米国支配体制が崩壊して現代が本当に「多極化」してしまったら……

 願わくは、現代世界が「多極化」してしまうことのなからんことを!
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