趣味の迷宮 ~LABYRINTHVS AD PARNASSVM~

作者Tiberius Felixの迷宮的な趣味に関する雑記帳。 主に音楽、映画、読書、語学、グルメなどの感想・論評を中心に、興味の赴くまま無秩序に迷宮的に書き綴っていくつもりです。

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アストレとセラドン

 御年87歳のフランスの巨匠監督、エリック・ロメールの引退作という触れ込みの、「アストレとセラドン」を鑑賞してきた。

 17世紀のフランスの流行小説が原作で、バロックのフランス宮廷人が夢想するところの5世紀のガリア地方の羊飼いの恋愛模様を描いた作品である。

 ……これが、突っ込みどころ満載で実に面白い(笑)。

 ストーリー自体は、ちょっとした誤解から行き違いが生じた若いカップルが仲直りするという話なのだが、これを原作では延々5,000ページもかけて描きに描いた大長編作品なのだとか。

 で、映画が始まってみると、なぜこんな話に5,000ページも使ってしまったのか、非常によく分かる。

 いかにもフランス人らしいことに、なにかあるとその都度延々と論理的な議論を展開して論争になるのである(笑)。しかもそのテーマは、肉体の愛と精神の愛についてであるとか、確実に5世紀のものではなく17世紀のフランス人の趣味に基づいたテーマで、ラ・ロシュフコー公爵やクリスティナ女王がサロンで夜通し繰り広げていたであろう議論のための議論ともいえるようなテーマばかりである。しかも、なぜか何か具体的なことが生じるたびに、議論がやたらとそうした抽象的、形而上的方向に脱線していくのである(苦笑)。

 しかも舞台は5世紀であるから、すでにキリスト教が国教化され、多神教は禁じられていた時代にもかかわらず、紀元前五世紀のギリシアの羊飼いのような登場人物たちがドルイド教を信じているうえに、さらにそのドルイド僧が一神教こそが正しい心理であるなどと言い出す、アナクロニズムの入れ子構造になっている(笑)。

 終始この調子で続いていくのだが、その一方で自然の残るフランスの奥地で撮影された映像は大変美しく、そして主役のアストレトセラドンをそれぞれ演じる、クレイヤンクールとジレがこれまたギリシア的に均整の取れた中性的美男美女で、この何もかも現実離れした物語を見る者を決して現実世界に引き戻させないのが素晴らしい。

 いずれにしても、見て損のない楽しい映画であることは間違いない。
 どうせファンタジーならば、このくらい現実離れしていた方が夢がある(笑)
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