趣味の迷宮 ~LABYRINTHVS AD PARNASSVM~

作者Tiberius Felixの迷宮的な趣味に関する雑記帳。 主に音楽、映画、読書、語学、グルメなどの感想・論評を中心に、興味の赴くまま無秩序に迷宮的に書き綴っていくつもりです。

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ナポリ満喫~迷宮的旅行記第8章(14)

 翌朝目を冷まし、ベッドから立ち上がると……やはりズキっと痛みが走る。
 どうやら完全に痛めてしまったようだ。

 痛む尻をかばいながら朝食をとり、よろよろと駅に向かい、薬局でたどたどしいイタリア語と英語のちゃんぽんで意思疎通を図って痛み止めのクリームを手に入れた。

 トイレで患部に薬を塗りこみ、電車で一路ナポリへ向かう。

 薬のおかげか、歩くにも電車で座っているのにもなんとか支障はないようである。

 ローマからナポリへはAvieという言ってみればひかりに対するのぞみのようなノンストップの高速便が就航したようで、従来は2時間弱かかっていたのが、わずか1時間強で着くようになっている。朝8時過ぎにローマを発った私は、9時半にはすでにナポリ市内を考古学博物館へ向けて移動していた。

 理由はわからないが地下鉄が止まっていたため、考古学博物館までの2キロ弱の道のりを散歩がてら徒歩で移動することにする。なんとなれば私は、ナポリのこの猥雑で活気にあふれた路地が大好きなのだ。

 治安の悪さが喧伝され、日本人に敬遠されがちなナポリだが、治安の悪い場所は決まっていて、そこへ行かなければ少なくとも新宿や池袋あたりよりよほど治安がいい。

 駅からはトリブナーリ通りという幅4メートルもない細い路地が続いているのだが、この通りは下町の猥雑さにあふれつつも明るいうちなら治安は悪くない通りなので、ナポリならではの狭い路地にそそり立つアパート、その間に翻る洗濯もの、という、日本人の思い描くイタリアの町並みの一つの理想像(?)が堪能できる通りである。

  やはりナポリに来ると南国風情がどことなく感じられる。特に、家の色遣いが、確実に明るいのである。

 ローマの町並みは、古いレンガだったり、石材の自然の風合いだったり、せいぜい大理石か漆喰塗といった落ち着いたものが大半であるが、ナポリに来ると、古い建物も漆喰にショッキングピンクやレモンイエローの鮮やかな塗装を施してあるのだ。教会のファザードも明るいきれいなクリーム色だったりするから恐れ入る。こうした色合いがまるでジェラートのようで、何とも心楽しくなる。梅某かずお先生も東京じゃなくナポリに建てておけばあんな裁判沙汰にならなかったろうに(笑)。

 町並みを楽しみながら歩くこと15分、大聖堂の前にさしかかる。せっかくなので寄り道。
 ここは年に2回、聖ジェンナーロの血が融ける奇跡の祭典が行われることで有名だが、堂々とした大伽藍で、かつてのナポリ王国の首都にふさわしい立派な大聖堂だった。

 ドゥオモを出て、再び歩くこと約10分、考古学博物館に到着。ここも外壁はショッキングピンクである(笑)。

 ここにはポンペイ・エルコラーノをはじめ、ローマ時代には富裕層の別荘がたくさんあった、故に良質の美術品のたくさん出土するカンパニアの遺跡から出土した数々の彫刻・モザイク画が展示されている。

 1Fは彫刻コレクションで、名高いヘラクレスの巨大な像や、狩りの群像など、本当に圧倒的な迫力で迫ってくる素晴らしいものばかりである。これが当時は邸宅の庭や公共浴場を飾っていたというから、ローマ帝国というものの偉大さをまた実感するというものである。タイムマシンがあれば、ぜひとも当時の公共浴場に入りに行きたいものだ(笑)。

 1Fを見終えたので、地下に行ってみた。
 地下はギリシア・ローマ以前の文明に関するものが集められていて、中心はエジプト考古物のコレクションである。ヒエログリフの碑文やら神々の石像やらを眺めながら進んでいくと、ミイラとその棺桶の展示の前に地元の小学生の見学団体が集まっていた。

 日本でいえば小学校の1年生か2年生くらいの年頃の子どもたちだったのだが、先生の話に飽きたと思われる女の子がおそらくナポリ語で何やら私に話しかけてきた。しかし私には彼女の言うことが理解できなかったので、イタリア語で、私は日本人だからイタリア語がよくわからないんだ、ごめんね、と答えてみたところ、女の子は大喜びで、まわりのみんなに日本人がいるよ、日本人がいるよ、と触れ回る。

 どうやらイタリアの子どもたちの中では日本人はみんなドラえもんのように何やらハイテクで便利な道具を隠し持っていると思われているらしく、機械を見せて!というようなことを言って子供たちが寄ってきた。私が苦笑いしていると、先生が子供たちを一喝し、子どもたちはすごすごとミイラの前に戻って行った。

 これ以上先生の邪魔にならぬよう、私は足早に部屋を出て、2階へと向かった。

 2階はフレスコ画とモザイク画のコレクションなのだが、これが圧巻であった。

 モザイク画のち密さ!
 まるで印象派の絵画を見ているかのような、豊かな色彩表現に、ルネサンス絵画に通じる遠近法、バロック静物画のような静物画の数々。動物は今にも動き出しそうであるし、猫の毛並みの柔らかさが固い石片で微細かつ繊細に表現されている。

 ポンペイやエルコラーノ出土の美術品の数々だそうだが、これは本当に素晴らしいコレクションである。これだけ素晴らしい出土品の数々がこちらに保管されているのであれば、ポンペイに行って遺跡だけ見てきても、それはポンペイの半分しか見たことにならない。博物館に来てモザイク画の数々を見て、初めてポンペイを十分に見たといえるだろう。

 さらには秘密の小部屋と称する、エロティックな題材の出土品を集めた18歳未満立ち入り禁止の展示もある(笑)。思いのほかヘルム・アプロディトス(両性具有神)の題材が多いのが発見であった。

 イタリア広しといえども、これほど古代絵画の充実したコレクションのある美術館はほかにない。古代ローマ美術の、特に絵画の真髄を見るには、どうしてもここへ来るしかないのである。

 すっかり感激して博物館を後にした私は、昼食を取りに街に繰り出した。(続く)
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コメント

イタリアの小学生可愛いですねー
私は、忍者のこと聞かれて困ったことありますが(笑)

考古学博物館の記述だけでも、やっぱりナポリに行かなきゃなあと実感しました。

>ヘルム・アプロディトス(両性具有神)
まっさきにフェリーニの「サテリコン」思い出しました。
何ものにも(特にキリスト教)に縛られることのなかった時代は、美の遺品のみに面影を留めているということでしょうか。


ちなみにその後痛みは治まりましたか?

  • 2009/07/27(月) 23:48:22 |
  • URL |
  • なつ #3ItBdoaY
  • [ 編集]

>なつさん

そう、とても無邪気に珍しい日本人を喜んでいて、微笑ましかったですよ。

ぜひともナポリに行きましょう!
なんだかんだと、私がイタリアで一番好きな街かもしれません。

  • 2009/07/30(木) 23:19:10 |
  • URL |
  • Tiberius Felix #-
  • [ 編集]

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