趣味の迷宮 ~LABYRINTHVS AD PARNASSVM~

作者Tiberius Felixの迷宮的な趣味に関する雑記帳。 主に音楽、映画、読書、語学、グルメなどの感想・論評を中心に、興味の赴くまま無秩序に迷宮的に書き綴っていくつもりです。

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第九あれこれ(その4)~ヒストリカル系一気書き

 フルトヴェングラーについて思う存分語らせていただいたので、その流れからヒストリカル系の第九へと話を広げたいと思う。

 一口にヒストリカル系、と言ってもその対象とする時代は幅広いのだが、私の興味としては原則として戦前、すなわち1945年5月7日(8月15日ではありませんぞ、念のため)以前の録音である。

 さてそのヒストリカル系、フルトヴェングラーの向こうを張る大巨匠と言えばトスカニーニであろうか。この人の演奏もまた個性的だ。彼の演奏スタイルは徹底的なイン・テンポとカンタービレと言う非常に明快な原理に貫かれていて、一つ一つの音符が弾けんばかりに熱い。戦線の録音としては36年、38年、39年、41年の録音を聞いたが、その中でも特にずば抜けてトスカニーニらしいのは39年のNBC巻との録音である。これがまたものすごいハイスピードのインテンポで、非常に鮮烈な印象を受ける。ブリュッヘンの演奏が素材の味を生かした刺身、フルトヴェングラーの演奏が技巧を凝らしたフレンチとすれば、トスカニーニの演奏はさしずめ暴れまわる魚を丸呑みするような踊り食いである。これもまたすさまじい演奏だ。

 もう一人、忘れてはいけない巨匠と言えばメンゲルベルクであろうか。この日とは西洋人には珍しく、コンセルトヘボウのシーズン最後のコンサートでは毎年第九を演奏していたとかで、全曲録音も複数残されている。私が聴いたのは確か1940年の録音だったと思うのだが、こちらはどちらかと言うとフルトヴェングラー寄りの重厚長大型の演奏である。やはり細かいところでこの人の個性が現れているのだが、その中でも特に、フィナーレでトリッキーな急ブレーキをかけるのが印象的だ。

 日本のクラシック業界でフルトヴェングラー、トスカニーニと並べて3大巨匠とされるワルターは、残念ながら戦前の第九全曲録音を残していない。部分的には残っていて、CD復刻もされていたらしいのだが残念ながら私はまだ聴いたことがない。もしその演奏が全曲の請っていれば、CDももっと復刻されて、三大巨匠の戦前録音第九の聴き比べができたろうに、惜しいことだ。

 ヒストリカルの第九と言えば、忘れてはいけないのがワインガルトナーである。この人の演奏はよく言えば温和なトスカニーニ、悪くいえば気の抜けたトスカニーニと言う感じで、楽譜に忠実に淡々と音を作るタイプの演奏である。しかしながら、彼が35年にウィーンフィルと録音した第九は、戦前一般に流通したSPレコード録音唯一の全曲盤として大変親しまれていたのだそうである。たしかに、余計な味付けをしない素材重視の音作りで大変素直に貴久子とができる。復刻で聴くとどうしても音がやせるので、薄味な演奏と感じてしまうのだが、きっといい蓄音機でSPで聴けば、まだ弦にガット弦を使っていた時代のウィーンフィルのニュアンスに富んだ音色を味わえるのだろう。
 ちなみにこの録音でバリトンソロを歌うリヒャルト・マイヤーと言う人の歌声が大変美しく、復刻CDのやせた音でさえあれほど魅力的なのだからSPで聴いたら、増してや同時代に生の歌声に接したら、どんなにか素晴らしいだろうかと想像を膨らませたくなる。

 さらに時代をさかのぼるとオスカー・フリートによる電気録音全曲盤第一号があり、その前にはザイドラー=ウィンクラーによるラッパ吹き込みの全曲盤がある。この録音は史上最初の第九善曲録音とされていたのだが、最近これよりも古いやはりラッパ吹き込みの全曲録音が発見され、雑誌の付録に復刻CDがついてきたのを覚えている。

 いずれも残念ながら復刻版のCDの音がよろしくなく、演奏の是非を判断しづらい状況である。これもまた、いつの日か蓄音機で聴いてその真価を味わってみたいものである。

 このほかにも、戦後に活躍を続けるシューリヒトやベームなどの戦前録音が残っているらしく、復刻CDを聞いたことがあるが(とはいえ、あまり録音年代の信憑性の高くないらしいレーベルの復興だったので、もしかしたら偽者であるリスクがある。),戦後の巨匠たちもまだまだ駆け出しの時代だったせいか、上に述べた演奏のような域にはまだ達していないようである。

 書き出すときりがないが、ヒストリカルはやはり突出した個性が面白い。
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コメント

戦前の全曲盤

 第9のSP盤は10枚はあるので、盤が揃っていて綺麗なものを探すのは至難の業なのですよ。と云うのにお目に掛かったすらがありません。
 ワインガルトナーの国内プレスのSP盤は手元にありますが、生温い、きまじめな演奏ですが、歐州プレスの凄いピカ盤でも発掘できれば、印象も新たになると思います。

  • 2005/12/22(木) 20:59:19 |
  • URL |
  • gramophon #-
  • [ 編集]

 なるほど。まず、盤が全部そろっていると言うだけでなかなか厳しいのですね。

 SPは盤質の問題もありますから、なかなか良いものを探し出すのは大変ですよね。

  • 2005/12/23(金) 21:26:15 |
  • URL |
  • Tiberius Felix #-
  • [ 編集]

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