趣味の迷宮 ~LABYRINTHVS AD PARNASSVM~

作者Tiberius Felixの迷宮的な趣味に関する雑記帳。 主に音楽、映画、読書、語学、グルメなどの感想・論評を中心に、興味の赴くまま無秩序に迷宮的に書き綴っていくつもりです。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

第九あれこれ(その5)~古楽系

 行きがかり上ヒストリカル系を先に書いたのだが、実は私が一番すきなのは古楽系なのである。
 すなわち、弦にはガット弦を張り、作曲当時の使用の楽器を使い、作曲当時の演奏習慣を踏まえ、より曲の本質に迫ろう、と言うアプローチの演奏スタイルのことなのであるが、私の場合、単純に好みの問題として、古い使用の楽器の音色が生理的に好きだ、と言う理由から古楽系を好んで聴いている。

 一般的な傾向として、この種の楽器を用いた演奏スタイルは、次のような効果をもたらす。
 まずヴィヴラートを控えめにするので、ガット弦本来の音色の傾向とあいまって弦楽器の音色に透明感があり、すべすべした感じがする。そのため相対的に管楽器が目立ち、音楽の構造が浮き彫りになってくる。また、各楽器の音色がより個性的な濃厚な音色を持っているので、ソロで目立つところの目立ち方もより華々しい。

 特に古楽器を使うことによって特徴的な音色感覚を味わえる箇所がいくつかある。

 たとえば第一楽章の終盤、弦がベースとなるメロディを繰り返す上でフルート、ファゴット、オーボエなどの木管楽器が短いメロディのソロをリレーしていく場面などは、木管楽器それぞれの濃厚な味わいが効果的な印象を与えてくれる。

 また第二楽章では、ティンパニの音色が大変ゴツゴツした骨太のもので、全体の駆動力となるあのドラミングがより力強く味わえる。また中間部でホルンの奏でる低音に乗ってヴァイオリンが細かいメロディーを奏でる部分では、何か関東の冬の星空を連想させるような冷たい透明感が感じられる。

 第三楽章ではちょうど真ん中あたりで出てくるホルンのソロが、ヴァルブのないナチュラルホルンで、唇と、朝顔に突っ込んだこぶしのその突っ込み方と、そして小さなユビ穴の調整だけであたかも綱渡りのような超難関パッセージとして演奏され、現代楽器ですいすいと演奏される場合との効果の違いがはっきりしているし、終盤で現れるヴァイオリンがトレモロ状の音形を緩やかなテンポと早いテンポで二度奏でる部分(ここは私がこの楽章で一番好きな部分だ)の透き通るような透明感が何ともいえない。

 第四楽章でも冒頭のチェロとコントラバスのレチタティーヴォの切れ味がより鋭く聞こえるし、合唱との溶け合い方もよりうまく行くように聴こえる。

 その2で取り上げたブリュッヘンの演奏のほかに、私が持っているものとしてはノリントン指揮ロンドン・クラシカル・プレイヤーズによるもの、ホグウッド指揮アカデミー・オヴ・エンシェント・ミュージックによるもの、グッドマン指揮ハノーヴァー・バンドによるもの、ガーディナー指揮オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティークによるもの、ヘレヴェッヘ指揮シャンゼリゼ・オーケストラによるもの、インマゼール指揮アニマ・エテルナによるもの、と合計7種類を数える。

 その中で私が気に入っているものは、すでに述べたブリュッヘンを除くとガーディナーとヘレヴェッヘの演奏である。

 ガーディナーの演奏はトスカニーニのそれにも比すべき大変切れ味鋭く力強い演奏で、ドライヴ感とスピード感にあふれ、第四楽章のフーガの迫力はヒストリカルも含めた私が聴いたすべての演奏の中でダントツ一位である。

 ヘレヴェッヘの演奏は上記に述べた楽器の音色の特徴が一番色濃く出ているように感じられ、特に第二楽章のところに述べた冬の星空感が一番良く録音されていると思う。

 もし机の引き出しから1824年5月7日に行くことができたら、きっとこんな演奏が聴けるのかもしれない。
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://tiberiifelicis.blog10.fc2.com/tb.php/79-50e70ef7
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。